今年の5月、天皇陛下の御代のお代替わりが行われます。今の天皇陛下が退位されて、新しい天皇が即位されるのです。これは昭和から平成に移った時から数えて約30年ぶりに行われる、とても大きな儀式です。
ここでは、皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんに、平成の即位を参考にしながら、今年の退位と即位に関連する儀式の見どころを聞いてみましょう!

ミモレ:今の天皇皇后両陛下の退位のための儀式は、いつから始まるのでしょうか?

渡邉:まずは3月から4月にかけて、三重県伊勢市の伊勢神宮や奈良県橿原かしはら市の神武天皇陵、東京都八王子市の昭和天皇陵に参拝し、退位することを報告されます。

ミモレ:3ヵ所も! いわば天皇のご先祖さまたちに、ご報告を兼ねたお墓参りをされるのですね。儀式のようなものもあるんですか?

渡邉:4月30日午後5時から「退位礼正殿の儀」が皇居で行われます。これは退位を国民に知らせて、天皇陛下が退位前に最後に国民の代表に会われるもの。この儀式によって、今上天皇は上皇となり、皇后美智子さまは上皇后となられるんですよ。
普通は、天皇は崩御ほうぎょ(亡くなること)とともに御代が代わるのですが、今回は200年ほど前の光格こうかく天皇のように、お元気なまま退位されて次の御代に移られますので、退位も光格天皇の例に倣って行われるのではないでしょうか。

ミモレ:200年前と同じ! 誰も見たことがない儀式が行われるのですね。今の天皇陛下が退位されたら、皇太子さまが次の天皇に即位されますが、どんな儀式があるんですか?

渡邉:翌日の5月1日午前10時30分から、皇太子徳仁なるひと親王殿下の即位に関する儀式が行われます。「三種の神器」という言葉を聞いたことがありますか? 代々皇室に伝わる宝物を次の天皇にお渡しするんですよ。ちょっと難しい言葉ですが、「剣璽けんじ等承継の儀」によって皇位の印である神器のうち天叢雲剣あめのむらくものつるぎ八尺瓊勾玉やさかにのまがたま、すなわち剣璽を継承され、皇太子さまは第126代天皇に、雅子さまは皇后になられます。これ以後、1年ほど関連行事が続くんですよ。

ミモレ:お宝というのは昔の神話物語に出てくるものなのでしょうか? 

渡邉:そうそう、天叢雲剣は草薙剣くさなぎのつるぎともいい、大昔にスサノオノミコトがヤマタノオロチを退治したときに尾から出てきた剣と言われていますね。

ミモレ:そんなものが残っているなんてビックリですね。ちなみに即位に伴う儀式で、私たちに関わってくることがありますか? ゴールデン・ウィークが10連休になるとか……。

渡邉:その通りです。今年に限ってですが、特別な祝日が作られてゴールデン・ウィークが最大10連休になるんですよ。

ミモレ:なんでそんなに長いお休みになるのでしょう?

渡邉:皇太子さまが即位する5月1日は、今年限りの祝日になります。さらに、祝日に挟まれた4月30日と5月2日も休日扱いとなるので、土曜日が休みの人は4月27日から5月6日の振り替え休日まで10日間が休みになるのですね。

ミモレ:うわぁ~、うれしいです! 旅行に行ったりできますね。でも、ちょっと儀式を見てみたい気も……。私たちが見られるものもあるのでしょうか?

渡邉:5月1日に行われる「剣璽等承継の儀」は、今の天皇陛下が即位されたときは、ほんの少しテレビで中継されました。その後の儀式で、賢所や正殿に移動される際に十二単じゅうにひとえをお召しになった雅子さまのお姿が垣間見られるでしょう。まさに平安時代の絵巻物さながらの美しさですよ。

まず即位儀式・行事の幕開けとなるのは、5月8日に行われる「期日奉告の儀」。かつて美智子さまがお召しになったのは、白の内衣、紅の袴、薄緑に白い模様が浮き出た小褂に扇という、たいそう鮮やかな装束だったんです。

そして少し間があきますが、秋、10月22日には、天皇陛下の即位を内外に宣言する「即位の礼」が執り行われます。この日も、今年限りの祝日となります。

ミモレ:今年は休みがたくさんできるんですね。「即位の礼」って、どんな儀式なんですか?

渡邉:まずは宮中三殿で天照大神あまてらすおおみかみをはじめとする天地の神々と歴代天皇皇族の御霊に即位を報告される「賢所大前の儀」、続いて皇居正殿にて「即位礼正殿の儀」が行われます。
前回、高御座たかみくら(天皇位を象徴する玉座)の今上天皇は、天皇にのみ許された色である禁色きんじきの衣をまとって即位を宣言されました。御帳台みちょうだい(即位の礼における皇后の御座)の美智子さまは髪を大垂髪おすべらかしに結い、十二単をお召しになりました。

前回、美智子さまが即位された際の十二単のお姿。 雑誌協会代表撮影

今回の雅子さまも、賢所から正殿にお渡りになる際のご様子がメディアを通して見られることでしょう。

ミモレ:天照大神に報告するんですか!? ほかにも私たちが見られるものはありますか?

渡邉:忘れてはいけないのが華やかな祝賀パレードです。祝賀パレードはテレビでも、沿道でも見られます。10月22日の「即位礼正殿の儀」ののち、陛下と雅子さまは洋装にお召し替えされて祝賀パレードが行われるんです。
平成のパレードでは、美智子さまは天皇家に代々伝わるティアラをつけ、ローブデコルテというドレスに宝冠大授章という勲章をつけられていました。雅子さまもきっとご伝来のティアラをおつけになると思いますよ。

宮内庁提供
雑誌協会代表撮影

今回、新天皇と新皇后雅子さまがお乗りになるオープンカーは皇居から元赤坂の東宮御所まで進むことになっています。きっと何万人もの人々が沿道に詰めかけて、新しい天皇皇后両陛下の誕生を祝福することでしょう。
平成の代替わりに行われた祝賀パレードでは、英国車ロールス・ロイスの黒いオープンカーが使われましたが、古くなったため、今回は国産車で行われることになっていて、トヨタ自動車の最高級車「センチュリー」に決まりました。どんな車か見るのも、楽しみのひとつですね。

ミモレ:きっと大勢の人が注目し、集まるでしょうね!

渡邉:豪華なセレモニーは、まだまだ続きますよ。
即位の礼のあとに行われる「饗宴の儀」では、新天皇と新皇后、それに外国からのお客さまも第一級の礼装でテーブルについて、特別なフルコースのお料理を召しあがるんです。そこでは新しい御代の幕開けにふさわしい、華やかな皇室外交が行われることでしょう。
11月14~15日には、代替わりの重要祭祀「大嘗祭だいじょうさい」の中心行事である「大嘗宮の儀」が外国から700人ほどの賓客を招いて行われます。そののち、皇居・宮殿で新天皇が参列者と会食される「大饗の儀」が、同月16日と18日に催されます。

向こう1年間は、私たちもメディアを通して古式ゆかしい儀式をはじめ、美しいお召し物やドレス姿の雅子さまを拝見できますよ。楽しみですね。