サブタイトルの「冒険世界」に込められた意味とは?【いだてん 第三回】_img0
「冒険世界」の記者・本庄(山本美月)のファッションにも注目。
第三回 「冒険世界」 演出:西村武五郎
あらすじ
熊本に生まれ育った金栗四三(中村勘九郎)は、嘉納治五郎(役所広司)が教える東京高等師範学校を受験し合格、友人の美川秀信(勝地涼)とともに上京し、東京の喧騒に翻弄される。そこではじめて“マラソン”という競技の存在を知る。

 

まず、注目したいのは、「冒険世界」の記者・本庄(山本美月)のファッション。進歩的な職業婦人らしいモダンなボブに帽子、白い襟と絞ったウエストがポイントの黒いスーツに、真っ赤なコート。
女子に大人気の三島弥彦(生田斗真)を「三島君」と親しげに呼び、座ったまま取材する(足組んで)なんて、かっこ良すぎます。いまでいうと、スポーツ担当の女性アナウンサーみたいな感じでしょうか(女子アナは足組んで座って取材はしないでしょうけれど)。
山本美月さんの公式ブログにも衣裳のお写真が載っていますが、とにかくステキ。
衣裳担当は、メジャー作品からミニシアターまで幅広く参加されている宮本まさ江さんです。
おしゃれ過ぎる記者・本庄にインタビューされて「負けた人間の屈辱を味わってみたい」と言う三島君もかっこ良すぎます。

 

本庄が所属する「冒険世界」については後述することにして、第三話の冒頭は、昭和35年、古今亭志ん生(ビートたけし)の家。
いつの間にか弟子入りして“五りん”という名前までもらい、めざしなら要らないとせっかくの朝食をスルーするマイペースぷりの小松(神木隆之介)が「親父の言いつけ」と冷水をかぶる場面から、50年前にさかのぼって、熊本の四三の冷水浴場面へーー。
五りん→五輪? 五りんの親父とは誰なのか。テレビドラマにあるとうれしい、ちょっと凝ったお通し的な“謎”が提示されました。
この志ん生の家(お茶の間)に妻りん(実際の志ん生の孫・池波志乃)、娘・美津子(小泉今日子)、弟子・今松(荒川良々)が集まっている画が昭和のホームドラマのようで、それもまた楽しめました。こっち路線も深めていただきたい。

最近、「いだてん」に合わせて志ん生の落語を聞いているのですが、その語り口に聞けば聞くほどハマっていきます。
三話では、志ん生の小噺で有名な、夢に見た茄子の途方もない大きさを語るものが、志ん生の師匠・橘家円喬(松尾スズキ)が語っているところを、若き志ん生こと美濃部孝蔵(森山未來)が気に入って、練習している場面が出てきました。この茄子の大きさの表現がステキ。
松尾スズキさんは「ファンキー! 〜宇宙は見える所までしかない〜」(96年)という戯曲で岸田戯曲賞をとっていらっしゃいます。茄子の表現とそのタイトルが、哲学性でどこか共通するような気がしてうっとり。で、また、孝蔵が小噺を練習しているところを、四三が「自転車節」を歌いながら走っていくんですね。運命の交錯です。

 
  • 1
  • 2