2019年は4月から働き方改革関連法が施行されます。残業規制や脱時間給制度が導入され、勤務間インターバル制度(※仕事を終えてから次に働き始めるまでに一定の休息期間を設け、働く人の生活時間や睡眠時間を確保するもの)の導入努力義務がすべての企業に課されることになります。

 

私は新聞社時代、裁量労働制で働いていました。基本的には出勤時間も退社時間も裁量でありつつ、21時、22時など一定の時間を超えた分は残業代が支払われるという枠組みでした。朝早くでて、夜遅くまで働く。ただ、やることをやっていれば記者クラブのソファで仮眠をとるのも自由。時間に縛られない枠組みが合っているように感じていました。

一方で、子どもを産んでからは、お迎えに行くまでの限られた時間を1秒たりとも無駄にしまいと効率を考えて仕事をこなしていたので、なぜ同僚が朝遅く出社してきてだらだらと仕事をしていたとしても残業代がつくのかと理不尽に感じていた面もあります。なので、基本的には脱時間給がコンセプト通りに、本当に本人の裁量がきいて、「時間ではなく成果で」の枠組みになるのであれば、合理的ではあるだろうと思っていました。

今、私はシンガポールに住んでいて、リモートで日本のメディアに記事を書くなどのほかに、シンガポールの日系企業で週1~2回ほど成果報酬形式で仕事をしています。シンガポール人へのインタビューやシンガポール人を雇っている日系企業の声から、日本よりも「仕事をする時間よりも成果」の観念が浸透している様子がうかがえます。

先日、シンガポールで金融系企業の営業として働く女性にお会いしたら、非常にフレキシブルな働き方をしていて、平日の午後3時前後に、週3回はジムに、週1回はスパに行くと言っていました。営業ゆえにということもあるかもしれませんし、もちろん日本でもそういった働き方ができている人もいるでしょうが、以前シンガポールでの別の取材のときにオフィスビル内にある会員制のジムを覗く機会があり、平日の日中に運動をしている人の多さに驚きました。

 

「日本は専業主婦が家庭を支え、サラリーマンは長時間労働をするパターンが一時期成功して、女性が企業で働き始めてからもそのスタイルでやろうとするので無理がきている」という話をすると、「それで、どうやって家族をもつの?」と聞かれてしまいました。シンガポールも出生率は低いのですが、仕事と子育ての両立のしやすさで言うとシンガポールに軍配が上がりそうです。

仕事の時間に対して家族の時間を重視する姿勢、そしてそれがしやすい雰囲気も日本より強いのではと感じます。夫妻揃って別々の日系企業に勤めるシンガポール人女性の方にインタビューをしたとき、「夫は日本に出張に行っても、必ず夕方に子どもたちとオンラインで顔を見て話す時間を作っています。日本人の方には飲みに行こうと誘われるみたいですが、その時間と重なるので断っています」という話をしてくれました。

日本では、今後、脱時間給になることで、かえって残業が増える人が出てくるのではと懸念されています。勤務間インターバルも、持ち帰ってサービス残業などにつながらないように注意が必要です。働き方改革が真に機能するには、家族や自分の時間を堂々と取り、合理的な時間で成果を出せるような枠組みや観念が必要になってくるでしょう。