「デザイナー 渋井直人の休日」第3話より。ⓒ渋谷直角/宝島社  ⓒ「デザイナー 渋井直人の休日」製作委員会

ここ数年、FacebookやTwitterといったSNSツールを手に入れた中年男性が、「エアポート投稿おじさん」や「クソリプおじさん」と化し、周囲をイラつかせている。それに比べたら、ドラマ「デザイナー 渋井直人の休日」の主人公・その名も渋井直人は、SNSをほとんどしないこともあり、まったくもって人畜無害であり、己の道を歩いており、なんの問題もない。それなのに、彼を見ているとなぜか、気恥ずかしくていたたまれなくなってしまう。

「デザイナー 渋井直人の休日」は、2019年1月17日(木)から放送がスタートしたテレビ東京の深夜ドラマ。フリーランスのおしゃれデザイナー・渋井直人(52歳・独身)の日常と恋模様を綴っていく。

第1話のオープニング。休日の朝、渋井直人は起きるとまず、DJセットでアナログレコードをかける。ビートを口ずさみながら、電動ではなくシェービング用ブラシで泡を立てて髭を剃る。そして、カーキのチノパン+白シャツ+ベージュのセーターに、クラシックなフォルムの紺色のダッフルコートをきっちりと着て赤いマフラーを巻き、キャンバストートを手に、クラークスのワラビーブーツを履いて近所(三軒茶屋と祐天寺と学芸大学が囲むエリアかと思われる)の散策へ。そこにこんなモノローグが重ねられる。

「まわりは僕をこだわりの人と呼ぶ。否定するつもりもなければ、肯定するつもりもない」
「これが自分の生き方、というだけのこと。簡単には変えられない、というだけのこと」
「ただいつも、何かが始まる予感は感じていたい」

自分の好きなものを見つけて、それを分相応に手に入れられる生活は理想的だ。とはいえ、そこで自分が完成したと思ってしまうとつまらない。未知の世界への好奇心や、まだ手に入れていない何かを求める気持ち(=何かが始まる予感)があるから、渋井直人は年相応の落ち着きと、少年のような瞳の輝きを兼ね備えているのだろう。しかし、何かが引っかかる。モノローグの、読点の長いタメ? おじさんがSNSに投稿する写真に添えられたポエム感? 常にそよ風を浴びているようなドヤ微笑?

原作は、『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』が映画化されたことも記憶に新しい、コラムニストであり漫画家でもある渋谷直角が、2017年に発表したコミックだ。『奥田民生〜』は、35歳の雑誌編集者・コーロキが、奥田民生のような肩の力の抜けたカッコいい大人になるために奮闘するなかで、アパレル会社の美人広報・あかりと出会い、恋愛の辛酸を舐めさせられる。

美人美大生との恋の予感!? 第1話より。ⓒ渋谷直角/宝島社  ⓒ「デザイナー 渋井直人の休日」製作委員会

渋井直人も恋をする。「何かが始まる予感」とはすなわち恋の予感。第1話では、馴染みの古書店兼カフェのオーナー(池松壮亮)から、「常連客の木村さん(美大生)が『渋井さんに抱かれたい』って言ってましたよ」と耳打ちされ、フリスクを大量投入して彼女の個展へ駆けつけると、大量のダッフルコート&クラークス&マフラーおじさんに色目を使う木村を目撃し、ハッと我に返って“予感”終了。

 
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