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狭い家を心地よくする「色の力」

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心地いい家作りのためには、そもそも「どこに住むか」「どんな家に住むか」ということが重要ですが、そのような選択の自由がない場合もあります。そこに住むしかない、窓からの借景も変えられない。スペースも狭い。ならばあきらめるしかない? ……そんなことはありません。

これまでにもお伝えしてきましたが、大きな面積を占める壁と床の色、家具や小物の色、それらを照らす照明に工夫を凝らすことで、その空間はいかようにも変わります。今回は「色」にフォーカスして、居心地のいい空間作りをお伝えします。

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撮影/青砥茂樹

こちらは、私がプロデュースした東京・新橋のステーキレストラン、「FOOD/DAYS(フードデイズ)」の写真です。この場所は難題だらけでした。スペースは狭く、天井も低い。借景も美しくない。予算も限られている。ほかの場所という選択肢はなく、どうにかしてここを大人が集まれる居心地のいい空間にしたい―――そこで、色と照明を工夫することで雰囲気を変えようと考えました。

私が出したアイデアは、照明を落とすこと、グレートーンでまとめる、ということでした。ヒントにしたのは、デンマーク・コペンハーゲンのレストラン、noma(ノーマ)。伺うたびに観察していたのですが、グレーのトーンをいかした壁や床材がインテリジェントな雰囲気で、家具やしつらえはシンプルなのに居心地がとてもいい。そして、照明はかなり落とされていて、その暗さが人と人との親近感を生み出しているんだなと感じました。

まず、床、天井、壁と3つの違うグレーのグラデーションで塗り分けることにしました。そして、テーブルに椅子、絵の額装はグレーとなじむ色にしてその存在感を隠しました。前々回ご提案したように、照明は暗く落とし、テーブルが「舞台」となるよう、食事が置かれるところだけにスポットライトが当たり、お客様も含めてほかの部分には光があまり当たらないようにしています。

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撮影/Anita Behredt

こちらはコペンハーゲンに住む友人、マイさんのキッチン。壁は薄いグレーがかったピンク、そしてキッチンのカウンタートップ、キャビネット、床はグレーのグラデーションで塗られています。窓枠と窓に続く部分だけが白く塗られていて、立体感を出しています。


自分の家のマイナス面をみていると居心地のよさをあきらめたくなってくるかもしれませんが、ぜひ「色の力」を借りてみてください。一度には難しくても、わが家はこの色でいこう、というテーマを持って変えていけば、居心地のいい家に少しずつでも近づいていけるはずです。

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PROFILE 行正り香/ゆきまさりか

高校3年時にアメリカに留学し、カリフォルニア大学バークレー校を卒業。CMプロデューサーとして広告代理店で活躍後、料理家になる。ふたりの娘と夫の4人暮らし。『だれか来る日のメニュー』、『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』ほか著書多数。サントリーのハイボールやアメリカンビーフ協会などテレビや広告などの料理も手がける。2018年には子どもから大人まで英語の基礎が学べる「カラオケEnglish」をローンチする。

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<新刊紹介>
『行正り香の家作り ヒュッゲなインテリア』

オールカラー128ページ 1600円(税抜)/講談社刊
ISBN 978-4-06-513068-1

“心地よくあたたかい空間や時間“という意味のデンマークならではの言葉、ヒュッゲをキーワードに家づくりと暮らし方をデンマーク親善大使(2017年 日本・デンマーク国交樹立150周年)の著者が提案します。


構成/山本忍(講談社)