『アメトーーク!』はテレビ朝日系にて木曜よる11時20分より。(写真は2月14日放送分)


真の売れっ子になるために


『アメトーーク!』の「今年が大事芸人」が2月7日にオンエアされた。2018年に売れっ子の仲間入りをした上り調子の芸人が、「人気の持続が難しい芸能界」で「真の売れっ子」になるためにどうしたらいいのかを語り合う恒例の企画。言い換えると、今注目すべき芸人がわかる企画といえる。

 

出演者は5組。「M-1グランプリ(以下、M-1)」からは最年少で優勝した霜降り明星、決勝進出したかまいたち、敗者復活戦から勝ち抜けたミキが、「キングオブコント(以下、KOC)」からは優勝したハナコと3位のチョコレートプラネットが出演し、ひな壇トークを繰り広げた。

27歳という若さでありながらさすが王者の霜降り明星には、ひな壇トークでも安心して見ていられる安定感があった。2人とも他の芸人に対して的確に反応しており、M-1についての記事でも言及したが、つっこみの粗品がMCとして番組を回す姿がさらにはっきりと見えた。芸能界の先輩ポジションで出演したロッチの中岡は、「ピンでも面白いけれど、コンビとして見ていたい。この先スターになっていくんじゃないかと思う」と、ボケなしで大絶賛。

霜降り明星と同期のハナコは、「アメトーーク!」初登場。ネタで強烈なキャラを演じる岡部が実は緊張しいのためトークで前に出られないとか、体を張りたいけれど胸毛が多すぎて裸になることに戸惑いがあるとか、悩みや不安も初々しい。先輩のチョコレートプラネットに悪意も計算もなく「売れると思います」と無邪気に言い放つ、「変わり者」(by雨上がり決死隊・宮迫)の菊田のキャラが、バラエティで跳ねる可能性も大いにあり。事務所の先輩でもある中岡の「ハナコ(の武器)はネタ。東京03さんのように、ネタでお金をとれる素晴らしいトリオ」に完全同意!

その中岡が親しみを感じるのは、チョコレートプラネットだとか。理由は、ロッチもチョコレートプラネットも、KOCの1stステージで最高得点を叩き出したが、Final ステージでネタの選択をミスし、大すべりして3位に終わったから。2015年のその事件になぞらえて、チョコレートプラネットは“ロッチ現象”といじられまくった。そんななか、彼らは松尾のIKKOさんをはじめとするモノマネを突破口にバラエティで大活躍し、「TT兄弟」というリズムネタもヒット。本人たちは「仕事の9割がモノマネ」「(IKKOさんの)つけまつげがついてないと不安」「モノマネ依存症(苦笑)」と葛藤を吐露したが、売れるためならなんでもするというなりふり構わない姿勢には戦う男の色気すら漂っている。

関西でアイドル的な人気が爆発しているミキは、兄の昴生が「ネットで『ミキ』を検索すると『うるさい』と出てくる」という悩みを告白。さらには、弟の亜生からは「おにいちゃんの口が臭い」とバラされる。しかし、亜生が「お兄ちゃんはピンの仕事が100%ドッキリ。僕はかけられたことがないから羨ましい」と言う通り、昴生のドッキリ芸人としての未来は明るい。「リアルキャスティングボード」というコーナーでは、ドッキリのターゲットとしてキャスティングする場合、出川哲朗→バイきんぐ・小峠→ロッチ・中岡→三四郎・小宮に続く位置にいることが明らかに。ちなみにライバルは、パンサーの尾形、あばれる君、朝日奈央、丸山桂里奈らが並ぶ。

この日、もっとも爆笑を連発していたのは、この企画に2年連続で出演したかまいたち。2017年のKOCで優勝し、関西のレギュラー番組を7本卒業して2018年春に上京した彼らにとっては、「マジで今年が大事」(山内)。ネタを書いていないのに、「ネタを書いてないみたいに言われるのがイヤなんです」と言う濱家は、ネタを書いていないことをどうしても認めようとしない自分を「めちゃめちゃ扱いにくいやないですか。けっこう長いこと喋ってるのにドーン(とオチがつか)ないから次いかれへんでしょ。わかってるんですよ」と苦虫を噛み潰したような表情で分析。己のプライドと葛藤を客観視して、心が千切れそうになる姿が爆笑されるという、未知のゾーンを開拓していた。

今年が大事な芸人は、もちろんこの5組だけじゃない。和牛やダイアンも超売れっ子となった千鳥の座を虎視眈々と狙っているし、昨年末に事件を起こしたとろサーモンも捨て身になればV字回復以上の再ブレイクがあるかもしれない。実力のある芸人が切磋琢磨する状況は、お笑い&バラエティ好きにとっては大歓迎。今夜は、かまいたち、霜降り明星、ジャルジャル、スーパーマラドーナ、トム・ブラウン、ミキ、和牛らM-1ファイナリストがドッキリにかけられる『金曜ロンドンハーツ』が楽しみで仕方がない!

<番組紹介>
『アメトーーク!』

次回は2月14日(木)放送。テーマは『高校中退芸人』。

 

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。