坂元裕二脚本ドラマが海外で大ヒット


坂元裕二脚本、松雪泰子主演で2010年に日本テレビで制作/放送されたドラマ『Mother』と言えば、当時5歳だった芦田愛菜の名演技が思い起こされます。絶えない児童虐待の社会問題に対して、「母性」をテーマに訴えかけるストーリーも挑戦的でした。数々の賞を受賞した名作ドラマのひとつです。

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松雪泰子、芦田愛菜出演の日本版「Mother」

『Mother』の根底にある「現代女性の生きる道を導く」メッセージは世界にも通じるものがあり、実は海外版も高い評価を受けています。トルコでは2016年に『Anne』(アンネ)のタイトル名でリメイクされ、「涙なくして見られないドラマ」と評判が評判を呼び、大ヒット。そのトルコ版が現在世界32か国以上で放送され、これまた人気を得ています。新たにウクライナでのリメイクも決定し、次々と広がりをみせています。

 

お隣の韓国でも2018年にリメイクされています。韓国版『マザー~無償の愛~』はイ・ボヨン主演で、韓国TVNのネットワークにより、韓国を含むアジア10カ国で放送されました。受賞歴も多く、韓国国内では韓国のゴールデングローブ賞と言われる「百想芸術大賞2018」でドラマ部門作品賞と新人賞のダブル受賞、「第13回ソウルドラマアワード(SDA)」では作品賞部門ミニシリーズ最優秀賞を受賞しました。さらに「第1回カンヌ国際ドラマ祭CANNESERIES 2018」で全世界のドラマ中、アジアで唯一、公式競争部門の10作品のうちの一作に選ばれる快挙も果たしています。

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韓国リメイク版「マザー〜無償の愛〜」。

そのカンヌ国際ドラマ祭が行われた現地で、日韓双方のプロデューサーに話を伺わせてもらう機会がありました。そこでわかったのが、日本のオリジナルも韓国版も支持される理由には共通点があること。そのひとつが「子役の演技力」です。芦田についてはデビューとなったこのドラマで、その天才的な演技力が示されたのは周知の事実。次屋尚プロデューサー(日テレ)は一般オーディションの時から、「芦田に秘められていた才能に惹かれた」と話していました。

韓国版も子役は同じく一般オーディションから選ばれたとのこと。300人の子役から勝ち取ったのがホ・ユルです。「決め手はその天才的な演技力だった」と、パク・ジヨンプロデューサー(スタジオ・ドラゴン)もその才能を見出していたようです。「韓国版はオリジナルの芦田愛菜ちゃんのイメージとは違いがあるかもしれません。天才的であることは共通していると思いますが、可愛らしさよりも、大人びた表情にこだわりました。ホ・ユルは心の機微を表すのが上手い。8歳には見えないほどの演技力でした」

上映された韓国版を実際に見ても、それは納得がいくものでした。サスペンス要素が色濃い印象の韓国版では緊迫感を子役にも求める必要があったのだろうと推測します。そして、このドラマをきっかけに、ホ・ユルも人気子役の一人に。こうして新たなスターを生み出す輩出力が認められる一方で、奇しくも企画の段階で苦労があったことも共通していました。

「内容が暗すぎる」と社内で反対された経緯があったことを次屋プロデューサーが打ち明けると、パク・ジヨンプロデューサーも申し合わせたかのように、同じような状況にあったことを話し出しました。「視聴率が求められる韓国でも同じように反対の声もありました。でもストーリーに感銘を受けたこのドラマを韓国でも作りたい(リメイクしたい)という思いは強かったです。必ず支持されるはずだと、自信はありました。結果、30代や40代の女性の間で話題になり、SNSの拡散によってファンが増えていきました」

逆境の中にあっても、リメイクというかたちでハマリ、見たくなるドラマに仕上がっていることが何よりも共通している点かもしれません。さて、そんな韓国版『Mother』が日本テレビグループのCSチャンネル「日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ」で日本版一挙放送に続いて、2月16日(土)に全話一挙放送されます。

リメイクドラマで気になるのは、その再現度合い。それぞれの地域でヒットさせるために、独自の脚色が加わることが多く、違いも出てきます。『Mother』韓国版の大筋の展開は日本版と同じですが、エンディングが変わります。ラブロマンスもあったりと、韓国ドラマならではの掟が入ったリメイク版を見比べる良い機会になりそうです。

<ドラマ紹介>
『マザー〜無償の愛〜』


CSチャンネル「日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ」
2月16日(土)一挙放送 11:00 全16話
脚本:チョン・ソギョン
出演:イ・ボヨン(スジン役)、ナム・ギエ(ホンヒ役)、イ・ジェユン(ジノン役)、ホユル(ヘナ役)、イ・へヨン(ヨンシン役) ほか

 

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 
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映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

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文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

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ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

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メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

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ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

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ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

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ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

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ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『僕らは奇跡でできている』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。