しかし先ほどの実業家のように、自らの努力でカバーできるところはすべてカバーした上で、どうしても排除できない部分にだけ賭けを絞ることができれば、確率をイチかバチか、つまり2分の1くらいにまで高めることができます。人生で2回、大きな勝負があるのだとすると、2分の1の勝負に2回勝てる確率は4分の1ということになります。
つまり運がいいと思われている人は、陰でこうした努力を積み重ね、4分の1の確率で勝負に打って出た可能性が高いのです。
これに対して、物事がうまくいかない人は、最初から賭けの勝負をしてしまいます。トランプで、最初にエースを引ける確率は13分の1。当てずっぽうの勝負をかけていては、まさにトランプと同じくらいの確率しかないでしょう。
人によっては4分の1でも厳しいと感じるかもしれません。しかしながら、極限まで努力を積み重ねた人には、やることはすべてやったという達成感や満足感があります。その結果、4分の1という数字は、高い確率と思えるようになってくるのです。つまり、運を大事にするという考え方は、極限まで努力したことの裏返しであり、そうだからこそ、思い切って勝負をかけられるわけです。
これが、いわゆる「幸運」というものの正体と考えればよいでしょう。
ここでいう努力とは、あらゆるものが対象となります。たとえば仕事の話であれば、業務をより高いレベルでこなせるよう、日々、工夫を積み重ねるのはもちろんのこと、顧客や上司のニーズをしっかり汲み取ることや、自身の感情をうまくコントロールする努力なども含まれます。
もし自分が運に恵まれていないと感じている人がいたら、少しだけ冷静になって、過去の行動を振り返ってみてください。本当に万全の準備をして臨んだのか、感覚だけに頼り、考える、判断する、という面倒な作業をなおざりにしていなかったのかチェックしてみるのです。
おそらくですが、うまくいかなかったケースの多くで、何らかの問題が見つかるはずです。
日頃から、すべてに最善を尽くす努力をしていれば、「不運」と思われていた事態の多くを回避できる可能性があります。つまり誰でも運を引き寄せたり、味方にすることができるのです。本当に「運」に恵まれない人というのは、それほど多くないと思ってください。
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