連ドラは一か八かのギャンブル? 「戦犯探し」に二の足を踏む事務所の戦略


まず単純に00年当時は最もメジャーと見られていた連ドラの位置づけが下がったことが原因に考えられます。

『逃げるは恥だが役に立つ』の星野源、『カルテット』の高橋一生、『おっさんずラブ』の田中圭など、近年のブレイク俳優は連ドラのヒットがきっかけ。一発当てれば社会現象的なブームを巻き起こせるほど、まだまだ連ドラの影響力は別格です。

ただその一方で、コケたときの代償も大きいのが連ドラの難しいところ。特にここ数年はネットニュースの普及により視聴率に関する記事がライト層の目にも簡単にふれるようになりました。主演の場合、視聴率が低かったときに戦犯扱いされることも多く、一度「低視聴率」のレッテルを貼られると、ステップアップのはずがせっかくのキャリアに傷がつくことも。

そのため、ここ数年は事務所サイドが作品選びに慎重になっているように見受けられます。たとえば、近年、若手俳優の中で最も勢いのある竹内涼真は、意外なことにGP(ゴールデン・プライム)帯の連ドラで主演経験はなし。菅田将暉に関しても今クールの『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』でようやくGP帯連ドラ初主演です。

当たればデカいが外すと痛い。ギャンブル性があまりにも高い連ドラに立て続けに出るのは避け、ある程度、テレビで名前を売った後は映画や舞台で大事に育てよう。こうした方針が、今の若手俳優のトレンドになりつつあり、その波を受けて舞台の需要が高まっているのではというのが、ひとつ目の理由です。

 


無料消費が当たり前の時代だからこそ輝く有料ライブエンタメの価値


今やCDはおろかダウンロードでさえ一度も音源を購入したことがない……というのも珍しくないのが昨今の音楽事情。有料聴取層比率が40.6%にとどまり、61.6%が主な音楽聴取手段にYouTubeを挙げています(2017年度「音楽メディアユーザー実態調査」より)。

映像作品においてもNetflixやAmazonプライム・ビデオなど映像配信サービスが普及する一方、まだまだ違法ダウンロードが横行しているのが現実。エンタメはお金を払って楽しむものではなく、無料で消費できるのが当たり前と考える層も少なからず存在しています。

けれど一方で、有料である音楽ライブの需要は年々高まっており、2010年には2618万人だった国内動員数も2017年には4779万人と約1.8倍。売上も2017年に3324億4800万円と過去最大を記録しました(2017年1月~12月、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会調べ)。

モノ消費からコト消費へ、消費者の消費動向が変動していく中、体験性の極めて高い舞台の価値が見直されるのも自然な流れと言えるでしょう。チケットが1枚1万円近い舞台でどれだけ集客ができるかは俳優の真価が問われるところ。今や次世代俳優の先頭を行く吉沢亮もブレイク前夜の19歳のときに主演舞台『ぶっせん』で集客に苦しみ、その悔しさから「心に火がついた」と折にふれ語っています。

それほど生の舞台は俳優が一皮剥けるチャンスにもなる。冒頭の00年の主演俳優の並びでジャニーズを敢えて外したのも、そもそもジャニー喜多川氏は昔から舞台に並々ならぬ愛を持ち、所属タレントに積極的に舞台経験を積ませていたから。稲垣吾郎の『月晶島綺譚』(99年)、『七色インコ』(00年)、草なぎ剛の『蒲田行進曲』(99年・00年)、生田斗真の『スサノオ〜神の剣の物語〜』(02年)などはその好例。演技派と呼ばれる彼らの影には舞台がありました。

そう考えると、実力派に育てたい事務所や、もっと成長したいと考える俳優本人が、舞台という選択をとるのも頷けます。