米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

【シネマコレクション・51】<br />実話の事件を描いたサスペンス『キャプテン・フィリップス』_img0
Columbia Pictures / Photofest / ゼータイメージ

もうひとりの“キャプテン”に関する映画『キャプテン・フィリップス』。’09年にソマリア沖で起こった、海賊による人質事件をもとにしたサスペンスですが、臨場感がものすごい!
事件を淡々と追いかけていく構成なのですが、最後の瞬間までハラハラさせられました。

どんな監督が撮ったんだろうとあとで調べてみたら、手に汗握りながら観た『ユナイテッド93』と同じポール・グリーングラス監督なんですね。今回もラストまで緊張感を持続させていて、物語の作り方が巧みな監督だなと感じました。強烈だったのは、ソマリア人海賊たちの存在感!
オスカーで助演男優賞候補になった海賊のボス役をはじめ、よくぞああいう俳優たちを見つけてきたなと絶妙なキャスティングに驚かされましたね。
あの大きなコンテナ船がほとんど武装せずに危険な海域を行き来していることも、意外な事実。とてもリアリティのある映像なので、小さなボートに乗せられて人質になった船長の恐怖がそのまま伝わってきました。

トム・ハンクス演じる船長は、足をケガした海賊の少年への対応を見ていても、まるでお父さんのように優しくて冷静で誠実。米軍のネイビーシールズのあり方も含め、単純な感動ではなく複雑な後味が残るサスペンスになっています。

『キャプテン・フィリップス』
’09年にソマリア沖で海賊の襲撃に遭い人質に取られた、アメリカ船籍のキャプテンの手記をもとに、『ボーン・アルティメイタム』のポール・グリーングラス監督、 トム・ハンクス主演で映画化。海賊のボス役は本作が俳優デビュー作となる。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。