米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

Sony Pictures Classics / Photofest / ゼータイメージ

こんなにこぼれ落ちそうなダイヤの指輪をしていたら、泥棒に狙われちゃうかも! なんて心配になってしまうほど、わかりやすくニューヨークにいそうなセレブをケイト・ブランシェットが演じた『ブルージャスミン』。『ゴシップガール』や『セックス・アンド・ザ・シティ』は観ていたけれど、ここまでバブリーなアメリカの東海岸の女性を、映画のなかで見たのは久しぶりだなと思いました。

彼女が着こなすシャネルのジャケットはもちろん、エルメスのバーキンの威力は、やっぱりすごい! これをひとつ持っていればお金持ちとして格好がつくし、セレブから転落したヒロインの最後のプライドの象徴のようで、いたたまれない気分になりましたね。

今作で今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞したケイトは、頰がこけていて、この年齢だからこそ演じられた役なのだろうな、という感じ。まるで虚言癖のようにず っとひとりで話し続ける最初の飛行機のシーンからどんどん壊れていく過程まで、シャツに脇汗がにじむ熱演で“痛い女”になりきっています。
虚飾にとらわれた人間が堕ちていく話はシンプルでわかりやすく、描かれているのはまさに現代の “THEアメリカ”。日曜日の昼間観るのにぴったりともいえる軽い映画ですが、人間にとって一体幸せとは何だろうと考えさせられたりもして……。
衣裳やインテリアも見応えがあるし、若い女の子よりも大人の女性たちにおすすめしたい作品です。

『ブルージャスミン』
実業家の夫との結婚が破綻し、すべての財産を失ったジャスミン。ニューヨーク社交界の花だった彼女は、サンフランシスコに住むシングルマザーの妹の質素なアパートに身を寄せる。人生を立て直そうとするジャスミンだがセレブリティ気分が抜けず、精神のバランスを崩していき……。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。