米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。

【シネマコレクション・57】<br />頭の中が“?”でいっぱいの群像劇『サード・パーソン』_img0
Sony Pictures Classics / Photofest / ゼータイメージ

一回観ただけでは頭の中が「???」でいっぱいになり、消化しきれなかったのが『サード・パーソン』。登場するのは、パリの作家、ローマで恋する男、ニューヨークで親権を争う元女優。タイトルの“サード”も3つの物語を指しているのか、物語の鍵を握る“第3の男”のことを指すのか、そのあたりも謎に包まれています。

共通しているのはみんな子どもをめぐる問題を抱えていて、心に闇があるということ。群像劇ですが、それぞれが一本の映画になりそうなほど密度の濃いエピソードが連なっています。何かにむしゃくしゃしている人が観たら、大変なのは自分だけじゃない、って励まされるかも!?

どの人物にもちゃんと見せ場があるので、俳優さんたちはみんな満足だっただろうなぁという感想も浮かびました。そういう意味では『8月の家族たち』のような映画とも、似ているかもしれません。恋愛映画のような側面もありますが決して軽い作品ではないので、じっくり向き合ってくださいね。

『サード・パーソン』
若い愛人とともにパリのホテルにこもって執筆している作家。娘を誘拐されたロマ族の女とローマのバーで出会うアメリカ人男性。息子を元夫から取り戻したいニューヨークの元女優。それぞれの物語が交錯するとき、思いも寄らないある真実が浮かび上がる。『クラッシュ』のポール・ハギス監督が手がけた、ひねりのある群像ミステリー。

取材・文/細谷美香
このページは、女性誌「FRaU」(2014年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。