「大きくなったら何になりたい?」という質問の罪深さについて_img0
 

私の友人が、インスタグラムにこんな素敵な投稿をしていました。本人の許可の上で載せさせていただきます。

There was a question in Japanese homework.
‘What do you want to be when you grow up?’
Tiya answered ‘I don’t want to be anything or anyone.
I am Tiya. I want to be me. I want to be Tiya’
I have lots to learn from her.

「大きくなったら、何になりたい?」の宿題に
「誰にも、何にもなりたくない。
ティアはティアだから、ティアのままでいいの。自分になるの」
6歳児から学ぶことが多い。
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私は一時期英語の勉強のために様々なTED TalkをYoutubeで毎日のように見ていたのですがで、その中に、子どもたちに『大きくなったら何になりたい?』と質問することへの疑問を呈している人が何人かいました。

たとえばEmilie Wapnickさんは「Why some of us don't have one true calling」というトークの中で、様々なことに興味をもっては飽きたら他のものに関心を移していくタイプの人間もいるんだ!ということを自身の経験をもって語っています。

そういうタイプの子どもにとって、「大きくなったら何になりたい?」「将来は何をするの?」と聞かれ続けることは、何か1つに絞って続けることができないことに自責の念を抱かせ、1つの「天職」を見つけることができないのは自分の欠陥なのではないかと思わせがちである、と彼女は主張します。

でも、世の中には全く関係ないように思える2つ以上のことを組み合わせ、成し遂げる人たちもいる――。だから、そういう人たちは「自分にはマルチポテンシャルがある」と思えばいいんだよ、世界は私たちを必要としている!そういったメッセージでEmilieはトークを終えます。

そもそも、子どもが知っている職業というのは非常に限られていますし、○○年後は今ある仕事の○割がなくなっている――などと言われる中で、子どもたちに「大きくなったら何になりたい?」と聞くことはあまり意味がないはず。

大人だって、本当に小さな子どもが答えたものになるとは思っていない、無邪気な会話の中の質問でしかないでしょう。それが結構子どもを困らせているのであれば、聞くのはやめてほしいなぁと思ったりします。


先日ニュースで、柔道の金メダリスト松本薫さんが現役引退の記者会見で「第二の人生なんですけど、アイスクリーム作ります!」と言っているのを見て、度肝を抜かれました。しかも用意周到にすでに看板までできている⁉ と思ったら、早速東京富士大のキャンパス内にお店を開かれていて、連日盛況なようです。

そのアイスクリーム屋さん「Darsy’s」のコンセプトを見て思わずうなってしまいました。乳製品も砂糖も不使用、グルテンフリーでギルト(罪悪感)フリー!アレルギーを持つ方も、ヴィーガンの方も食べられます、とあります。これは有名な方がやっていなくてもニーズがありそうです。

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なぜ彼女がアイスクリーム屋さんになったのか。

「アスリートとして減量があり、減量すると体の中の水分が抜けて熱くなるので、みんなアイスを食べる。そんなときに毎日食べられるアイスクリームが欲しいなと思っていた」

一般的に言って、職場に「多様性」が持ち込まれるメリットは、様々な経験や価値観が知の結合をもたらすことと言われています。でも、これは性別や国籍の多様性だけではなく、副業や「第二の人生」という形で個人の中でも起こりえるはずです。

松本薫さんの場合は、所属先企業の理解や貢献も大きかったのかもとは思いますが、アスリートは引退後の活躍の場が限られてしまうという問題も解消させつつ、これまでの経験がシナジーを起こして花開いた素晴らしい事例と感じました。

こんな事例もあるわけだから、子どもたちに、「大きくなったら何になりたい?」と、むやみやたらに聞かない。あるいは、聞いてもいいけれど、1つに絞らないといけないみたいなことを言わない。「私は私になりたい」という、ティアちゃんのようなメッセージを、抱きしめてあげたいものです。