コード進行が同じであれば、使える音も似てきますから、必然的にどこかで聞いたことがあるフレーズになる可能性は高いということになるでしょう。
プロの音楽家というのは、アーティストですが、同時にビジネスパーソンでもありますから、リスナーが求める楽曲を作れなければプロとして活動を続けることができません。このため音楽業界では、リスナーがどのようなメロディやコード進行、アレンジ(編曲)を好むのか日夜研究を続けており、その成果としてヒット曲が生まれているという側面があることは否定できません。
近年、AI(人工知能)の技術が発達してきたことで、ヒット曲の大量生産ができるようになりつつあると言われています。しかし、高い能力を持った音楽家であれば、ITの力などを借りなくても、多くの人が好む楽曲をごく短時間に大量に作り出すことができます。
実際、アーティストの楽曲と企業CMのタイアップが企画される時には、何十パターンものサビが用意され、CMのイメージにピッタリと一致し、しかも多くのリスナーが喜ぶようなフレーズをビジネスライクに選び出すという作業が淡々と行われることがあります。90年代に一世を風靡したある有名なレコード会社はこうした手法を多用し、大ヒット曲を次々と世に送り出していました。
このような話を聞くと、味気ないと感じる人もいるかもしれませんが、人間の感性はそれほど薄っぺらなものではありません。先ほど説明したカノン進行がJ-POPの定番だからといって、そのやり方で曲を作れば、誰が作っても売れるというわけにはいかないからです。
あいみょんさんの他の楽曲を聴くと、古いところではフォークソングの大御所である吉田拓郎さんの影響を受けていると思われる部分もあり、音楽的なバックグラウンドはかなり広いようです。彼女のこうした独特の感性や音楽的能力に、定番の手法がミックスされることでマリーゴールドという名曲が生まれたと考えた方が自然でしょう。
楽曲というのは、似たようなメロディでも楽器の編成やアレンジを変えると魔法にかかったようにまるで違う雰囲気に仕上がります。音楽は自分が聴いて感動すればそれでよいものですが、その曲がどんな構成やアレンジになっているのかといった部分にも着目すると、さらに楽しめるのではないでしょうか。
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