【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声
3月12日、議員会館で開催された「緊急避妊薬(アフターピル)アクセスの諸課題を考える緊急院内勉強会」。国内で初めてアフターピルのジェネリック医薬品が認可されたことを機に、アフターピルのアクセス改善をテーマとする講演やリレートークが行われました。
そもそもアフターピルとは、性交後72時間以内に服用することで高い確率で妊娠を防げる避妊薬。女性にとっては望まない妊娠を防ぐ“最後の砦”ですが、日本では医師の診断が必要な処方薬であるうえ、価格は1万5000円以上することも。そのため、「休日や夜間には入手しにくい」「価格が負担になる」等の問題があり、ジェネリックの導入で半額程度まで抑えられる見込みとはいえ、よりいっそう入手しやすい環境整備が課題とされています。
この日は、産婦人科医や専門家、有識者、国会議員のみなさんが次々に登壇。アフターピルの市販化やオンライン診療化、価格の引き下げなどについて多角的に話し合われましたが、なかでも強く印象に残ったのは、アクセス改善が急務とされるその背景のこと。勉強会の中盤で読み上げられた「アフターピル服用当事者たちのエピソード」は、とても生々しく胸に迫るものがありました。今回は、その3つのエピソードにクローズアップ。勉強会の様子とともにご紹介します。
避妊は女性の健康にとって“付加的”なものなのか?
産婦人科医の遠見才希子先生は、日本の避妊がコンドームなど不確実な方法に頼っている状況を危惧し「日本では低用量ピルも避妊目的だと自費になる。女性のリプロダクティブヘルスが保険診療でないのはおかしい」と指摘。また、アフターピルのアクセス改善について「性に乱れた自業自得の女性まで助けるのか」と批判があることについては「医療は人を罰したり律したりする立場にはない。健康を守るため、安全に平等に提供されるもの」と反論しました。
続く「#なんでないの プロジェクト」代表の福田和子さんは、海外における避妊法の選択肢の多さを紹介。「なかでもアフターピルは、先進国に限らず世界76カ国で市販されています。価格も数百円〜数千円で若者には無料提供されている国も。根本的に、日本では女性の性の健康が付加的なものとして扱われていることが問題。私も留学するまではそれが普通と考えていましたが、いまでは日本の女性はもっと国から守られるべきだと痛感しています。」
学生を対象とした性の講演も多いNPO法人「ピルコン」の染矢明日香さんは、中高生の性知識の乏しさに言及。独自に行っているアンケート調査によれば、性知識の正答率は約4割、高校生のアフターピルの認知度はたったの2割程度。「インターネット上に誤った性情報が氾濫するこの時代に、学校の性教育はほとんど進化していない。教科書に『性交』の記載はなく、高校ではようやく『避妊』『コンドーム』『中絶』の言葉が出てきますが、コンドームの適切な使い方やアフターピルには一切触れられていないのです。」
遠い世界の話ではない、「つけてくれない」「破れていた」
そんな日本の現状を踏まえたうえで、染矢さんから紹介されたのは、アフターピル服用当事者たちの声。不意のアクシデントや自覚のない性暴力にまつわる具体的なエピソードは、自分自身や身近な人にも充分起こり得ることのように感じられました。
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