ビジネスパーソンの中にはMBA(経営学修士)の取得を目指して海外留学する人もいますが、MBAコースで教えられているようなカリキュラムであれば、ネットを使えばタダで入手できてしまいます。しかも、特定分野の知見が古くなってしまうスピードも増していますから、MBAを持っていないと入社が難しい一部企業などを除いて、次々と独学で新しい知識を仕入れた方が有利という考え方もあります。
そうなってくると、留学で得られる最大の成果はやはり「体験」ということになるでしょう。
同じカリキュラムをネットによって独学で学習するケースと、仲間とディスカッションしながら学習していくケースを比較した場合、当然、後者の方が圧倒的に理解度が高くなるのは間違いありません。また海外の生活そのものが大きな刺激となりますし、日本に住んでいた時には気付かなかった文化の違いを認識するきっかけにもなるでしょう。
先ほども説明したように、今はネットという完璧な情報インフラが存在しています。各国の国民性や文化の違いについても、ある程度までなら現地を訪問することなく理解できます。しかし、実際に現地に行って長期間滞在することで得られる体験とは比較になりません。
日本社会は諸外国と比較して“ガラパゴス”であり、「日本の常識は世界の非常識」などと言われることもあります。各国にはそれぞれの常識があるので、一概に日本だけが特殊というわけではないのですが、日本人の行動様式が諸外国に比べて少々特異であるというのは間違いありません。
グローバル社会では、異なる文化圏の人と接する場合、できるだけ自国の特殊性を出さないよう、普遍的なコミュニケーションを心がけるという暗黙のルールがあります。日本に限らず、どの国も実はガラパゴスなのですが、それを表に出さないような知恵を身に付けているわけです。
具体的に説明すると、「絆」という単語が浮かんだとしても「信頼関係」という普遍的な単語に置き換え、それを外国語に翻訳して会話すれば、相手が「???」となることはありません。
しかし日本人の場合、外の社会に行っても、自国の特殊性を出さないよう工夫する人が少なく、これがコミュニケーションの障害になっています。そして最大の問題は多くの日本人がそれを認識していないことです。
こうしたことは日本にいるとなかなか気付きにくく、外国で暮らすことではっきり分かるケースも少なくありません。その意味では、留学してみるというのは効果的な方法といえます。
もっとも全世界的に教育費の高騰が激しいですから、個人的には留学はコストパフォーマンスが低下しつつあるという印象ですが、このあたりは個人の価値観といえるでしょう。
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