米国では破産情報はもちろんのこと、誰が住宅ローンをいくら借りているのか、誰にどんな前科があるのかといった情報まで、ほぼ丸見えの状態ですが、それによって大きな社会問題は発生していないようです。おそらく他人の生活にそれほど関心がないことが原因と思われます。
しかし日本の場合、手続き上、情報公開が必要であった破産者情報であっても、これが広く行き渡るとバッシングや嫌がらせといった事態が生じる可能性があり、そうであるからこそ、このサイトの運営者には批判が殺到したわけです。
サイト運営者に悪意があることはほぼ間違いなく、閉鎖も当然だと思いますが、本当に是正すべきなのは、こうしたサイトの存在ではなく、破産を材料に他人を貶めたり、差別する風潮の方でしょう。
ITの普及によって、私たちが知らないところで様々な個人情報が収集されています。
AI(人工知能)を活用すれば、お店での支払い状況や預金の推移などから、その人の信用レベルを数値化することなど簡単に出来てしまいます。諸外国では、スマホのバッテリーの消費パターンから、その人がどれだけ金遣いが荒いのか分析するケースも出てきています(バッテリーの消費がやたらとはやい人は、お金にルーズな人が多いそうです。おそらく不必要なアプリをたくさん入れて放置していることが要因と思われます)。
残念ですが、こうした流れは、もはや止めることができません。下手に禁止してしまうと、今度は水面下でこうした情報を集める人が出てくるので、逆に問題がやっかいになります。
近い将来、全員の行動がITで点数化され、ランク付されてしまうという、あまり想像したくない社会がやってくるでしょう。もしかすると、ツイッターのフォロワー数などSNSにおけるつながりの多さで、家やお金の借りやすさが変わるといったことも十分にあり得る話です。
私たちは、こうした社会の到来が不可避であることを受け入れた上で、それによって発生する新しい差別や偏見にどう対処すべきなのか、もっと真剣に考えた方がよいと思います。
収集された情報で信用が低いと判断された人は、値段が高くなったり、高い金利を払う結果となるかもしれませんが、こうした情報を元に社会的に差別されるようなことはあってはなりません。自分とは違っていても、他人の生活スタイルや価値観はお互いに認め合うという、よい意味での個人主義を定着させる必要があるでしょう。
- 1
- 2
Comment