平成最後の日に、皆さんに問いかけさせてください。

おしゃれって何のため?

人はなぜおしゃれをするの?


毎日、たくさんのファッション情報を配信しているミモレの運営をするにあたり、私はずっと考えてきました。

私自身の答えはまだまだ見えませんが、料理とファッションは似ているところがあるな、と常日頃考えており……

たとえば、

ごく当たり前の食材、調味料で、びっくりするほど美味しい料理を臨機にちゃちゃっとつくれる人がいる=ベーシックなアイテムしか着ていないのに、なぜかいつも新鮮でおしゃれなコーディネイトに見える人がいる

レシピ本通りに作っているのに、なんだか味が決まらない=セオリー通りのコーディネイトをしているのに、なぜかこなれて見えない

……論理ではなく、感覚で「料理できちゃう=おしゃれになれちゃう」という「センス」のある人が一定数いるところ、がその共通項のひとつかな、と。

でも、生まれながらにセンスをもっている方はあくまでも少数派で、たいがいの料理上手やおしゃれ上手は、経験と試行錯誤を積み重ねてきた結果なのではないかとも考えています。

長年、ファッション誌の編集者をやってきました。ファッション担当ではありませんでしたが、ファッション班がどのようにページをつくっていたかは把握しているつもりです。おしゃれなアイテムやコーディネイトをたくさん発信してきました。食べれば美味しい料理がわかるように、見ればおしゃれだということがわかる写真をたくさん掲載してきたのです。もちろん、そこには解説を添えていますが、どうしてもそこの流れるメッセージは「真似すればOKですよ」というところに帰結してしまう。

むむむっ

おしゃれな人の真似をする(おしゃれのエッセンスを取り込む)ということも、もちろんおしゃれ上達の近道だとは思うのですが、どこかで「自分にとってのおしゃれとは何か?」という問題に対峙しなければ、真似をいくら続けても、おしゃれはいつまでたってもその人自身のものにはなっていかないのではないか?

本当なら素朴な家庭料理を身体が欲しているのに、なぜか皆が憧れているフレンチシェフの料理をどうにか真似しようと苦心してしまう。そして、できずに落ち込んでしまう。まわりの人はできている気がして自信がなくなる……自分が本当に欲していることと、その手段のズレをきちんとチューニングしていけるのは、やっぱり自分しかいないと思う訳です。

むむむっ

既におしゃれのセンスを養われている方のために「もっとおしゃれを極める」「おしゃれを自由に楽しむ」ことを伝えるだけではなく、「おしゃれになろうとしている方が自分のおしゃれに自信がもてるようになる」という後押しをすることが、より重要なのではないか、とミモレを運営している頭の片隅でずっとずっと考えてきました。料理に置き換えて言うならば、料理が趣味の方や料理人の方向けの情報ばかりでは意味がないと考えているということです。

そんなことを悶々と考えている時、私の頭の中の霧を晴らせてくれたのが、MBさんの著書でした。そして、すぐにインタビューのアポをいれました。

「MBというメンズのファッション界で話題の人がいるんですよ」と会社の同僚(男性)に教えてもらったのがMBさんを知ったキッカケでした。「へ〜」となんとなく聞き流してしまっていたのですが、その数日後、一緒に話を聞いていた咲子が「あの時、話題になった方の本、読んでみたのですが、とってもおもしろかった。というか、ミモレで伝えたかったことがズバリ書いてある気がします」と私に差し出してくれたのです。「えっ」と思い、その夜に一気に読了。「わ、こんな人を見過ごしていたなんて、一生の不覚!」と咲子に感謝しまくったのであります。ありがとう、咲子! 『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』
 
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