質問2:「どのような取材を経ているのか?(3144日も密着したのか?)」

【内田篤人】著者が見た、トップアスリート苦悩の3144日間の記憶_img0
 

 壮大なタイトルですけど……というような流れで聞かれることが多かったように思う。確かにものすごい日数だ。だからその間どのような取材を経ているのか、どのように取材したのか疑問に思うのは自然なことかもしれない。質問1への回答と重複もするのだが、単独インタビュー、試合や練習での囲み取材のような公式なコメントと、日常の雑談の中での非公式なコメントが混在している。雑談の中のコメントは、当然雑談なので毎回メモを取っていた、といわけではなかったが、本のプロローグのシーンのように、これはという話の時にはメモを取っていた。そういったものの積み重ねで成り立っている。公式と非公式のコメントが混在するのだ。

 例えば、だ。本の第7章で、とある移籍話が破談になった場面に私がたまたま同席していたエピソードを書いている。この時は、シャルケの練習取材に行ったところ、練習場の周辺工事の関係で私はうまくミックスゾーンに入れなかった。だが、内田が気を利かせて、帰宅の方向が同じだからと車に乗せてその車中で取材時間を作ってくれた。その取材中に、くだんの破談になったという連絡の電話を受けた、という流れだった。この時はさすがに、車を降りてからメモを取ったのを覚えている。だが、後日パソコンが故障しデータが吹き飛んでしまったのだが。

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 というような感じで、公式な取材と、非公式で日常での出来事がシームレスにつながっており「どのような取材を経ているのか」という質問に的確に答えるのはとても難しかった。質問者の表情も冴えなかったから、欲しい回答を出せたわけではなかったのだろう。

 また、3144日間毎日密着していたのかと言われるとそうではない。まあ、当然のことだ。とはいえ、私自身の内田取材でいうとこれよりももっと長い時間がかかっている。はじめて内田を取材したのは内田が高校3年生の時だった。まだまだあどけなく、本当に華奢で、のちにイケメンとして大人気選手になるとは思いもしなかった。ただ、プレーそのものも、コミュニケーションの取り方もとても印象に残ったことは間違いない。