「大河」と「朝ドラ」の内容がじょじょに入れ替わってる〜!
同じく海外留学から戻ってきて、フレディ・マーキュリーみたいとツイッタートレンド入まで果たした可児徳(古舘寛治)は、女性は大殿筋が発達している、「骨盤がバーン、臀部がデーン」「女であることに自信を持ちなさい」「私は女だ」「それがどうした」「かかってこいよ」と女子たちに教育。可児の再登場の際の衣裳について、どういういきさつでこの衣裳になったかNHK広報さんに尋ねたところ、以下の回答をもらった。
「思わず笑ってしまう衣裳ですが、可児先生はダンスを教えているので、当時の欧米で着用されていたダンス用の衣裳をもとにしています。また、体育の先生でもあるので、白を基調としつつ、動きやすいように、下は紺色のブルマのような衣裳を着用しています」
ブルマだったのか…。それに白いタイツを着用してバレリーナみたいにも見えた。なにより汗だくなところが面白かった。
この一連の女子の体育に関するお話、朝ドラですと言われたらそう思ってしまうかもしれない。「私は女だ」「それがどうした」と復唱しているときの顔と口調がものすごく不満げな杉咲花は朝ドラ「とと姉ちゃん」でのヒロインの妹役を経て、ヒロインになりましたと言われても納得してしまいそう。
そもそも最近の朝ドラが「あさが来た」をはじめとした歴史的有名人の一代記が人気になり、朝ドラが「女の大河化」してきた現象を私は自著「みんなの朝ドラ」をはじめ、ことあるごとに書いてきた。一方、「大河ドラマの朝ドラ化」は「いだてん」にはじまったことではなく、「花燃ゆ」「おんな城主直虎」などメジャーな歴史的偉人でない女性の知られざる物語が描かれることが増えている。「大河」と「朝ドラ」の内容がじょじょに入れ替わってる〜!(「君の名は。」のセリフのトーンで)状況なのだ。
もっとも「おしん」の橋田壽賀子先生の書く大河「おんな太閤記」「いのち」「春日局」は女性が主役で、朝ドラが好きな女性層も取り込んできたし、大河のヒット作「篤姫」は、女性が主役で、頭のいい旦那さまに支えられてがんばるという朝ドラでも喜ばれそうな大河だ。朝ドラも男性が主役のドラマも時々ある。来年の朝ドラ「エール!」は窪田正孝が主役だ。大河も朝ドラもいつでも同じことをしているわけではなく、ときどき視点を変えるなどしてつねに前進しているので、先入観にとらわれると見誤る。例えば、ビールと思い込んで中身を見ないでお茶を飲むと、どんなに美味しいお茶でもすごくへんな味に思えるようなことがあって、脳の思い込みとはとかく不思議なものである。
「いだてん」はガッチガチに固まった頭やカラダのコリをほぐして、芯に届く魔法の手のようなドラマ。シマがしめつける和装を解いてダッシュするシーンも、チュニックを着た女性たちが「茶の湯のこころ」「月のしずくのように」とメイポールダンス(西欧の豊穣を祝う踊り)を舞うシーンもどちらも開放感あって美しくわくわくした。
十九回は燃える箱根駅伝!
【データ】
大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』
NHK 総合 日曜よる8時〜
(再放送 NHK 総合 土曜ひる1時5分〜)
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
演出:井上 剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁
制作統括:訓覇 圭、清水拓哉
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ、綾瀬はるか、生田斗真、森山未來、役所広司 ほか
第19回「箱根駅伝」 演出:大根仁
ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。
文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。最新刊は渋谷、浅草、豊洲など東京のいろんな街を舞台にした連作小説『インナー・シティ・ブルース』(スペースシャワー・ブックス)。ほかに『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』、『文化系のためのヒップホップ入門1&2』(大和田俊之氏との共著)など。
ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002
メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。
ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。
ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。
ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。
ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。
- 1
- 2
映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。