知人のSさんに、「ぜひ、連れて行って欲しい」と懇願したのは、京都大学にある吉田寮(築106年。日本最古!)です。
昨年、NHKで放映された『ワンダーウォール』(昨年の超私的NO.1ドラマ!/オンデマンド視聴可能)を見てから、いつか絶対に訪れてみたいと考えていた場所だったのです。
日常が切りとられたドキュメンタリーかのように、淡々とドラマは進んでいきます。青春群像劇のようでありながら、現代社会に隠れている問題がクリアに浮き堀りにされてきます。小さな事象をしっかり描ききることで、今の世界に横たわる大きな問題があぶり出されてしまうことってあるんだよな〜。たとえばこれは、映画『誰も知らない』『万引き家族』などを手がけた是枝監督の作品でもよく思います。
劇中のナレーションに、「ベルリンの壁が崩壊した時、境界線としての壁は世界に16しかなかった。しかし2018年現在、建設中のものも含めるとそれは65に増えている」とあります。それらと、大学側と近衛寮の学生が対話をするためのカウンター窓口に作られた透明のアクリルの壁。そして、人と人、あるいは集団と集団との間を断絶する目には見ない壁と、本質的には何がどう違うのでしょうか?
以下は制作記者会見で読み上げられた脚本家・渡辺あやさんからのメッセージです。
「壁とは本来、私たちが弱い自分を守ろうとして建てるものなのだと思います。けれども壁の中に守られるということは同時に、壁の向こうのわかりあえたかもしれない誰かや、ゆるしあえたかもしれない機会、得られたかもしれない強さや喜びを、失うということでもあります。壁だらけの私たちの社会とは、そうした喜びがすっかり失われてしまった日常と言えるのかもしれません。それでも私たちの人生は、そんなさびしい現状をあきらめ続けるためにではなく、いつか壁を乗り越え、ふたたび向こう側の誰かとの喜びを、とりもどしてゆくために続くのだと信じたいです」
Sさんのはからいで、吉田寮内をゆっくり見学することができました。
自分の中にある大切な何かを頑なに守る強さ。だからこそ、人が大切にしているものを大切にしてあげようとする優しさが芽生える。ジェンダーも、年齢も、国籍も、はたまた内向的だろうと外向的であろうと、何かを成し遂げたかろうとノンポリだろうと、居住者であろうと旅人だろうと……たくさんの価値観が集まり、誰もが自分らしさを侵害されず、許容され、歓待される。そして、放っておいてももらえる(結構、これが大切!)。このしなやかなつながりに私は希望の光を垣間みてしまうのです。
現代に横たわる閉塞感。その原因となる壁。それを生み出すシステムの正体。私たちは、複雑化し、問題の本質が見えづらくなっている壁を前に、虚無感にさいなまれ、ただただ呆然と立ちすくむしかないのでしょうか?
吉田寮の中で育まれているコミュニティに、そして、時に心折れながらも体制という見えない壁に向かい対話を求めようとする学生たちに、私たちの前にたちはだかる数多くの「壁」を瓦解するためのヒントがつまっているような気がするのです。
今日のお品書き
梅雨に突入し、さらなる好評をいただいている「雨の日おしゃれ特集」。本日は、パンツの泥ハネ問題。こちらでザ・ノース・フェイスのパンツが紹介されているのですが、確かにアウトドアブランドの高機能素材アイテムは速乾性が素晴らしい! 先日のライブでもパンツを試着させていたいたのですが、サラサラとした軽やかな質感はシワにもならず、この時期の強い味方だな、と思いました!
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