【花田美恵子】主婦からヨガ講師、そして再婚。それでも花田姓を名乗る理由

救ってくれたのは、ヨガと
ハワイのおおらかな空気

もうひとつ花田さんを苦しめたのは、自分の気持ちと世間の反応とのギャップ。なかでも、離婚後も花田姓を使っていることに対する批判の多さには驚いたそう。
一般にはあまり知られていませんが、離婚で夫の戸籍を抜ける際、妻は子の有無にかかわらず新たに自分の戸籍を作り、旧姓に戻らず、婚姻時の姓を名乗り続けることができるようになっています。日本人の“家”を重んじる感覚から、離婚した女性は必ず旧姓に戻る＝前の戸籍に戻るものと思われがちですが、実は自らの戸籍と姓を選択できるのです。

「花田姓を名乗ることは、離婚に向けた話し合いの時に決めました。前の夫も『別にいいんじゃない？』と言ってくれたので、とくに問題もなく。別れた人の名前を使い続けるなんて、という意見もありますが、私としては名前自体にネガティブな感情はなかったんですよね。結婚は自分が決めたことですし、それで姓が変わったのも自分の歴史の一部。それを否定する必要はない。何より４人の子どもたちともずっと一緒にこの名前でやってきたのだし、このままやっていけたら、という気持ちだったんです。でも世間からは、私が花田姓にしがみついているように捉えられてしまって……。前の夫も含め、私の周囲の人たちは名前のことなんて何とも思っていなかったので、それだけが救いでした」

離婚によって一番つらい時期は脱したものの、世間からの中傷や経済的不安など悩みは尽きず。そんな花田さんを救ってくれたのもまた、大好きなヨガだったのだそう。自分にとってプラスになればとインストラクターの資格を取ったことで、好きなことが仕事に。ヨガを通して自分を見つめ直したことで、メンタルへの影響も大きかったといいます。

「全然できなかったポーズが日々の練習でできるようになった時の達成感とか、逆に全然ダメな日があっても“これも自分だ”と思える気持ちの余裕とか……。移住して少し経った後、父に『自分と世間の見方との間にギャップがあっても、今はもう気にならない。自分と家族が大丈夫ならそれでいい』と話したことがあるんです。私が自分の気持ちをきちんと言葉にして伝えられたことに父は驚いて『お前、強くなったな』って。昔から強いとはいわれていたけど（笑）、いっそう強くなれたのだとすれば、それはヨガのおかげだと私は思っています」

またハワイという土地のおおらかさも、自分を変えるきっかけになったそう。

「日本では誰もが頑張り過ぎだし、つねに緊張の中で生きているけど、ハワイは他人に迷惑をかけなければどんな服装でも体型でも自由。この土地のいい意味でのゆるやかさに触れたことで、こうしなきゃ、ああしなきゃと自分で自分を縛っていたことにも気づけましたね」

無理をするといつか壊れる。
必要なのは、自分が自分でいられる時間

幸せとは連鎖するものなのでしょうか、2018年にはハワイ在住の日本人男性と再婚。子どもたちも自分も、みんなが幸せな今の状況をわざわざ変える必要はないとの考えから、現在も普段はこれまで通り子どもたちと一緒に生活し、週末だけ夫の住む家で過ごす週末婚というかたちをとっているそうです。憧れる人も多い週末婚、実際のところはどうなのでしょうか？

「週末婚ですっていうと、みなさん『いいなぁ〜！』っておっしゃるんですよね、とくに既婚の方が（笑）。実際、すごくいいなと思いますよ。イヤなところは見なくてすむし、毎回新鮮ですし。生活は変えず、それでもなぜ籍を入れたかといえば、きっかけは旅行でした。何日も一緒にいてもイヤなところが見えなかったし、むしろ本当に楽しくて。そういう人がもう一回いてもいいかなと、素直に思えたんです。やっぱり、この年齢で子どもが4人いるのって何かとハードルだと思うんです。彼はそれでもいいと言ってくれたし、お互い“2回目”同士というのも、気持ち的にラクでしたね。希望が持てる？　それもよく言われます（笑）」

つらい時期やしがらみを乗り越えて、やっと穏やかな幸せを掴んだ花田さん。しかしこれからのこと、やってみたいことを聞くと、「まだそこまで考えられない」と、やや予想外の答えが返ってきました。

「ヨガとはきっと、一生のお付き合いかな。でも他のことは全然わからないです。というのも私、前の結婚からまだいろいろ引きずっていて。今もヨガやハワイの風土、今の夫といることで少しずつ浄化されて、回復しているところなんですよね。あの頃はいつも人を疑ったりケンカしてばかりだったのが本当につらくて。子どものおかげで何とか踏みとどまれたけど……。それくらい、思い詰めていましたから。人間、無理を続けているといつか壊れてしまう。少しでいいから、ありのままの自分でいられる時間が必要なんですよね」

大人にとっての“好きなこと”は、自由なようでいて実はとても難しいもの。最後に、好きなことを見つけるためのコツを聞くと、少し悩んだ後に「無理しないことかな」と教えてくれました。

「好きなものというより“自分がラクになれるもの”と思うと、見つけやすいんじゃないでしょうか。ラクな瞬間を体験すると、心や身体はそこへ戻っていこうとするから、それに素直に従えばいい。私はたまたまヨガだったけど、料理って人もいればランニングって人もいるし、出会うタイミングも含めて本当に人それぞれ。これだ、というものを見つけるのは、いくつになったって遅いことはないです。私だって、子ども4人産んだ後にヨガに出会って、こうやって本まで出させていただけたんですから」

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