駅前などで歩道にはみ出した看板を無断で撤去し、看板を出した店舗に猛烈なクレームを入れる「正論おじさん」がネットで話題になっています。以前にも、路上ライブは違法だとして、女性シンガーのCDを目の前で踏みつける男性が話題になったことがありました。これらはかなり極端なケースですが、日常生活でもこうした、過度な「正論」を目にする機会は多いと思います。こうした行為について、私たちはどう考えればよいのでしょうか。

三重県の駅前商店街では、89歳の自称元公務員の老人がちょっとした有名人になっています。「正論おじさん」と呼ばれるこの老人は、駅前商店街に毎日のように現われ、看板などが歩道に1センチでもはみ出していると「違法だ」として、看板を倒すなどの実力を行使し、お店に猛烈なクレームを入れます。本人は「法律に基づいてやっている」と発言したそうですから、正しい行為を行っていると信じているようです。

今年の1月にも同じような出来事が話題となりました。

東京・秋葉原で路上ライブを行っていた女性シンガーの目の前で、購入したCDを踏みつける男性がSNS上で話題になったことがあります。この男性は、路上ライブは違法であるとして「路上ライブを撲滅するためにやっている」と発言していました。

両者に共通しているのは、「法律に基づいた行動なのだから正しい」という考え方でしょう。しかしながら、彼等は法律について少し(というか「かなり」)誤解している部分があります。

看板のケースや路上ライブの詳細情報は不明ですから、断定はできませんが、一般的にお店の立て看板や路上ライブは道路交通法で規制されています。法律で規制されている行為を行えば当然、処罰されますが、話はそう単純ではありません。

日本では、法律の条文に書いてあることが絶対的に正しいと考える人が多いのですが、これは民主国家における法律の解釈としては前時代的で特殊な部類に入ります。

日本の隣国にもそのような国がありますが、独裁者が国民を支配している国における法律というのは、国民を弾圧するための道具ですから、そこに書いてある内容はどんなに非合理的であっても絶対です。しかしながら、民主国家における法律というのは、条文そのものよりも、法律が出来上がった背景や目的、基本的な価値観についても考慮に入れなければなりません。

 
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