「老後に2000万円が必要」と記した金融庁の報告書が大問題となっています。この報告書に対しては、多くの人が様々な意見を出していますが、本当のところ、どのくらい年金がもらえるのか、よく分かっていないという人がほとんどではないでしょうか。今回は、公的年金の実状について分かりやすく解説したいと思います。

日本の公的年金は国民年金と厚生年金の2本立てで構成されています。国民年金は全員が加入しますが、企業や官庁に勤めているサラリーマンはこれに加えて厚生年金にも入ることになります。年金を受け取る年齢になった時には、サラリーマンは、国民年金と厚生年金の2つから年金の給付を受けますが、自営業者(フリーランス)の人は国民年金の給付のみとなります。

つまりサラリーマンの人は2つの年金に入りますから、現役時代に徴収される保険料の金額も多くなりますが、もらえる年金も多くなり、フリーランスの人は、支払う保険料が少ない分、もらえる年金も少額です。後述するように国民年金の給付額だけでは生活できませんから、フリーランスの人は、自力で貯蓄や運用を進める必要があるでしょう。

国民年金と厚生年金では、保険料の徴収ルールが大きく異なります。

国民年金は、毎月一定額を保険料として支払い、一定額を年金として受け取ります。国民年金の現時点における月額保険料は約1万6000円で、受け取る年金の額は約6万5000円です。毎月、1万6000円を40年間支払っていれば、死ぬまで月額6万5000円の年金を受け取ることができます。

一方、厚生年金の保険料や年金の給付額は収入によって異なります。

厚生年金は、制度が毎年のように変わっているので年齢によって違いがありますが、現役時代の平均年収が約500万円だった場合、国民年金と合算した月額給付額は現時点で約16万円となります。年収500万円ということは月収約42万円であり、この収入に対して毎月徴収される保険料は約7万5000円です。ただし会社員の場合には、保険料の半分を会社が負担してくれますから、自己負担分は約3万7500円で済みます。3万7500円を40年間支払っていれば、毎月16万円の年金がもらえる計算です。

「意外と多いな」と思った人もいるかもしれませんが、ここにはいくつか落とし穴があるので注意してください。

先ほど、現役時代の平均年収と説明しましたが、これは新卒で働き始めてから40年間の平均値であって、退職時点での年収ではありません。日本の企業は年功序列ですから、退職時の年収が500万円の人は、新卒時には200万円台だった可能性が高く、全体を通して平均すると年収は400万円以下となり、もらえる年金の額はもっと少なくなります。40年間の平均年収が500万円というのはかなりの高給取りと考えてよいでしょう(一度、自分のこれまでの平均年収を計算してみてください)。

 
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