消費税率より金額の影響の大きいもの


ここまでに、すまい給付金、住宅ローン減税の拡充、贈与の非課税枠といった、政府による消費税緩和策を見てきました。これら三つの制度を確認して言えることは、

消費税増税を理由に急いで住宅を購入する必要はない

ということです。

加えて、住宅を購入する場合、消費税の税率よりも、物件価格そのものの変動や、住宅ローン金利の変動の与える影響の方が大きい場合もあることに注意が必要です。

不動産経済研究所の首都圏マンション市場動向によると、新築マンションの価格推移は消費税が5%から8%に上がる前の3月より、4月の方が物件価格全体の7%にあたる金額が値下げしています。

これは、消費税3%分の値上げを補って余りある値下げの幅です。消費税率が低いうちに購入を希望する人が多ければ、物件価格が上がる可能性がありますし、その後需要が下がれば物件価格が下がることも考えられます。

 

また、3000万円を35年返済で住宅ローンを借りた場合、金利が年1.5%と2%の場合だと総返済額で約320万円の差が出てきます。

このように、消費税率による影響よりも、物件価格そのものの変動や、適用される住宅ローンの金利といったものの方が、最終的に支払う金額への影響が大きいケースもあるのです。

こうした点を鑑みても、やはり消費税増税前に、急いで住宅を購入する必要はないということが結論として言えるでしょう。


住宅購入の条件は「内的要因」を重視


今回の消費税率引き上げにまつわる制度や、税率とその他の変動要素をみてもそうなのですが、普段からもよく「住宅を購入する時、お得なタイミングはいつ?」といった質問を受けることがあります。

こうした疑問が頭に浮かんだときには、住宅を購入する条件や動機を、内的要因と外的要因の二つに分けて整理することがおすすめです。

内的要因とは、家族構成や、健康状態、転職のタイミングや貯蓄の状況、住みたいエリアや間取りなど、自分たち独自の状況による要因を指します。

それに対して、外的要因とは、増税や、オリンピックの開催、景気の動向や金利の情勢など、世の中の流れによって変化するものを指します。

外的要因のほとんどは自分ではコントロールできません。

内的要因も健康や会社の業績などによっては自分でコントロールできないこともありますが、我が家の経済状況に応じて間取りを小さくすることや、エリアを変えるなどで、健全な予算の物件を狙うという選択ができます。

コントロールできない要因の「お得な時期」を狙っても、転職直後だと有利なローンが組めないなどの事態も起こるため、どちらかというと内的要因を重視して、健全な住宅購入を目指す方が現実的な選び方といえます。

物件が安くなる時期を待ち、必要な時に必要なサイズの物件に住めない。ということは、多くの人にとって本意ではないでしょう。

消費税率によって変わる適用される制度も参考にしつつ、ご自身のライフイベントや家計の状況をより重視して、慌てず落ち着いて、物件を選ぶことが満足への近道なのではないでしょうか。

文・構成/星飛雄馬

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