日本音楽著作権協会(JASRAC)が、音楽教室から著作権料を徴収するため、身分を隠した職員を音楽教室に通わせる潜入調査を実施していたことが明らかとなり、大きな波紋を呼んでいます。

レッスンの際に講師がお手本として聞かせる楽曲からも著作権料を徴収することに対しては一部から疑問視する声が上がっていましたが、こうした声に耳を傾けるどころか、一種のスパイ行為を行ってまで、音楽教室からの著作権料獲得に邁進するJASRACには、一種の気持ち悪さを感じた人が多かったのではないかと思います。

日本は著作権について国民的な議論を行うことなく、法体系を整備してしまった経緯があり、十分なコンセンサスが得られているとは言い難い状況です。多くの人がSNSなどで情報発信する現代においては、著作権は多くの人に関わる問題ですから、もっとオープンで自由な議論が必要でしょう。

日本では、他人が創作した著作物を利用した場合には、問答無用で著作権法の対象になるというのが一般的な理解だと思いますが、これは必ずしも全世界的なスタンダードではありません。例えば米国では、フェアユースという概念があり、報道や批評、研究、教授、調査など、公共の利益に合致し、著作権者の経済的な利益を脅かしていない場合には、著作物を利用しても著作権の侵害にはなりません。

分かりやすい例で言えば、多くの人に知らしめることが公共の利益となる場合には、Webサイトなどに写真を転載することができますし、パロディとして創作するのであれば、オリジナルの作品を流用してもよいという判断になります。

こうした概念が存在していることの背景には、著作権というのはあくまでビジネスで得られる対価に対して行使されるべきものという考え方があります。つまりビジネス上の権利が失われていないのであれば、むやみに著作権を行使することはできないわけです。

もちろん著作権の中には著作者人格権という概念があり、著作物そのものを保護するという面もありますが、まずはお金の問題であり、著作権者がそれについてどう考えるのかは重要なポイントと判断してよいでしょう。

その点から考えると、音楽教室でのレッスンからも著作権料を徴収するというJASRACの姿勢について、一部から疑問の声が上がるのは当然のことだと思います。

 
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