しかし、自分にミスがあったり、仕事の進め方や言い方に不適切な部分があったのなら、まずはその部分についてお詫びすべきです。
しかし、このセリフは「心配をかけた」ことをお詫びしているのであって、自身のミスについて謝罪しているわけではありません。このセリフには「私は絶対に悪くないので、本気で謝る気はありません」という意思がみなぎっていますから、当然、相手は「私は心配などしていない。あなたの不誠実な対応に怒っているのだ」と怒りを倍増させてしまうでしょう。
自身の不適切な言動について謝罪する際にも、言い方に注意する必要があります。「不快な思いをさせたのであれば謝ります」という言い方もよく耳にするのですが、これも言ってはいけないパターンのひとつです。「不快な思いをさせたのであれ「ば」」と条件付き(たられば)になっており、「私は悪くないけど、あなたが不必要に怒っているので、嫌々謝ります」と言わんばかりです。
ビジネスで成功する人は決してこのような謝り方はしません。その理由は、こうした謝罪方法は自分にとってメリットがゼロだからです。
相手が誠実な人であれば、その謝り方では決して納得しないでしょうし、そもそも相手がクレーマー体質の人であれば、どれだけ謝ってもムダです。誠実な人を味方に付けるチャンスをゼロにしてしまう謝り方を成功者がするはずがありません。
では、なぜ多くの人が、自分のミスを認めて素直に謝れないのでしょうか。その原因は高すぎるプライドです。
多くの人は、どういうわけか異様に高いプライドを持っています。このため、無意識的に自身の無謬性(むびゅうせい=絶対に誤りがないこと)を信じており、自分のミスを認めることができません(よく日本人は控えめだと言われますが、筆者にはそうは思えません。自身のミスを決して認めない人が控えめなわけがないからです)。
ミスを認めてしまうと自分に自信が持てなくなるので、ミスを認めないことで自分を守っているとも解釈できますが、多少、消極的なだけで無謬性を信じているという点では同じです。
素直にミスを認めて謝ることができないだけで、大きな人脈を逃しているのだとすると、その機会損失は人生全体では何千万円にもなっている可能性があります。
筆者の経験上も、自身のキャリア形成に影響を与えた人脈の多くは仕事でのトラブルがきっかけでしたから、成功者の見立ては正しいと思います。つまらないプライドは捨てた方が豊かになれるという話は、決してウソではありません。
前回記事「JASRACが潜入調査してまで守ろうとするのは何なのか?」はこちら>>
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