吉本興業に所属するタレント・芸人による「会社を通さない仕事」の是非が社会問題となっています。一連の騒動は、一般的なビジネスパーソンにとっても無関係とはいえません。その理由は、今後、副業として社外で仕事をする会社員が増えてくるからです。

事の発端は、雨上がり決死隊の宮迫博之さんやロンドンブーツ1号2号の田村亮さんなど、吉本に所属する複数のタレント・芸人が、反社会的組織のパーティに参加していたことです。もし、これが事務所によるマネジメントの結果であれば、それはすべて事務所の責任ですが、彼等は会社を通さずに個人的に仕事を引き受けていました。このため、宮迫さんや亮さん個人の責任が問われたわけです。

メディアでは、会社を通さない仕事のことを「闇営業」と呼んでいますが、この言い方に違和感を抱く業界関係者は少なくありません。その理由は、芸能人というのは従業員ではなく、あくまで芸能事務所と契約している個人事業主であり、その行動は原則として自由だからです。

タレントや芸人はそれぞれ芸能事務所に所属していますが、どのような仕事の受け方をするのか、ギャラをいくらにするのかは個別の契約によって決まります。

芸能界というのは、昭和な時代感覚がいまだに残っている業界ですから、しっかりとした契約書を交わさないケースはザラにありますし、実際、会見に臨んだ亮さんは「僕たちの会社というのは何かサインをするわけでもないので」と契約書がなかったことを暴露しています。芸能界の旧態依然とした体質の是非についてはここでは触れませんが、重要なのは、タレントや芸人は、口頭契約とはいえ事務所と事前に合意した上で、個人の才覚で仕事をしているという点です。

基本的にタレント・芸人と事務所は専属契約ですが、吉本には6000人もタレント・芸人が所属しており、芸能人としてのギャラだけでは生活できない人も大勢います。芸能人が下積み時代にバイトをしながら食いつないだという話を耳にしたことがあると思いますが、多かれ少なかれ、各社とも似たような状況だと考えられます。

ここで、売れているタレントが稼いだ利益を、売れていないタレントに回してしまうと、売れていないタレントの生活は保障されますが、売れているタレントのモチベーションが下がってしまいます。芸能人というのは、いつ人気がなくなるのか予想できない商売ですから、稼げる時にたくさん稼いでおきたいと考えるのはごく自然なことです。せっかく苦労して稼げるようになったのに、稼ぎの多くを会社に持って行かれてしまっては、納得できない人が出てくるのも無理はないでしょう。

現実には、売れっ子タレントのモチベーションを下げない範囲で、彼等が稼いだお金を売れていないタレントに回し、次の売れっ子タレントを発掘していくわけですが、ここで重要な意味を持ってくるのが、会社を通さない仕事の存在です。

 
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