【マディソンブルーディレクター中山まりこ】「おしゃれ迷子はチャンス」の真意とは?
自分で選んだシャツを着た日が、大人になった日
「マディソンブルー」のデビューコレクションには、オックスフォードシャツを含む6型のシャツが並んだ。カジュアルな質感は毎日着てもへこたれることなく、洗えば洗うほどふくらみが加わっていく。愛すべき素材はまた、中山さんをシャツ好きに導いた原点でもある。「私の世代って、そんなにカジュアルな時代ではなかったから、女の子はシャツじゃなくてブラウスしか着させてもらえなくて。だから、初めて着たシャツのことはよく覚えています。それがオックスフォードのボタンダウンシャツ。ウエストがシェイプされたシルエットで、着た瞬間に背筋がすっと伸びて。すごくヒップな感じがしたの。私にとって、ブラウスを脱いで自分で選んだシャツを着た日が、大人になった日です(笑)」
ふだん着とお出かけ着の境界線が、今よりもずっとくっきりと引かれていた少女時代。ブラウスにスカート、ワンピースにはボレロかジャケットを重ねておめかし。だから、ジャケットにもなじみが深い。「カーディガンをダラッと着るんだったら、ジャケットを着ちゃったほうがいい。そのほうがカジュアルも締まるでしょ?」ジャケットを日常的に、カジュアルに着こなす感覚は、年季の賜物というわけだ。
さて、シャツにジャケットときてもうひとつ、中山さんのおしゃれを語るうえで忘れてはならないアイテムがデニムのスカートだ。意外なことに、20代前半まではスタイルが一向に定まらず、古着もエスニックもトレンドもブランドも……とにかく好きなものを日替わりで着るようなおしゃれ放浪者だったという。自分らしいスタイルにようやく行き着いたのは、20代も半ばを過ぎた頃。ジージャンとウエスタンシャツ、そしてデニムのスカートが絶対に欠かせなくなり、ジャケットを合わせるスタイルが定番になった。「デニムの切りっぱなしのスカートとTシャツがあれば、たとえばハイブランドのジャケットを着ても自分らしくいられる。デニムスカートは、デザイナーと私をつないでくれる存在なんです。全身ブランドでまとめてしまうと居心地が悪いけれど、これに、ちゃんと私らしさがあるから大丈夫」といいながら、愛用するスカートに手を伸ばす。
スカートは自分でリメイクしているうちにどんどん短くなっていき、10年経って「気がつけばミニスカートにたどり着いちゃった」と笑う。ジャケットにシャツ、膝上丈のデニムスカートから伸びる、ほどよく日焼けした素脚。自分らしさを託すことができるスタイルを見つけて20年以上、たとえ迷子になっても帰ってくるところは「ここ」、と絶大な信頼を寄せる。ところが、実は今、「ここ」もなんだかしっくりこないおしゃれ迷走期に入ってしまったというのだ。
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