一部からは、年数が経過すると本人の能力にかかわらず賃金が上昇するという仕組みについて疑問視する声も出ているようです。
派遣社員は、基本的に業務スキルで給料を稼いでいるわけですから、一律に給料が同じというのは、自然な状況とは言えません。能力の高い派遣社員の賃金は高く、そうではない人は安くというのが本来の姿ですが、現実問題として、派遣社員全員のスキルを評価して、賃金を変動させるのは困難です。
共通の目安が求められるとはいえ、正社員の年功序列と同様、単純に年数が経過すると全員が昇給するという仕組みについては、違和感を感じる人が多いかもしれません。
正社員と非正規社員の格差があまりにも激しいという現実を考えた場合、どのような形であれ、派遣社員の待遇が良くなることは前向きに評価してよいでしょう。しかしながら、今回、同一労働、同一賃金の実現が、一種の年功序列によって実現する結果となったのは、何とも微妙なところです。
日本人は論理ではなく情緒で動く傾向が顕著ですから、客観的に他人を評価したり、他人からの評価を自身の活動に反映することがあまり得意ではありません。
年功序列という仕組みに大きな弊害があることは誰もが承知しているはずですが、それでも、ほとんどの企業がこの制度を維持しています。おそらくですが、評価というものが不得意であるがゆえに、年次という誰の目にもわかりやすい形で序列を作った方が、不満が少なかったものと思われます。
しかしながら、今の時代はビジネスの多様化が進んでおり、個人の能力をどう活用するのかが重要な課題となっています。得意な仕事に従事した方が従業員の満足度も高いですし、仕事のパフォーマンスも上がります。企業側も、高いパフォーマンスを出した人にたくさん給料を上げる方が合理的でしょう。
多くの人が、自分の得意な仕事を探す機会に恵まれ、その結果として高い給料を得ることができれば、経済全体の生産性も向上します。まだまだ不十分ですが、今回の同一労働、同一賃金の導入が、こうした仕組みを構築する第一歩になることを期待したいと思います。
前回記事「「闇営業」の言葉に覚える違和感。吉本問題が他人事ではない理由」はこちら>>
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