正式なアナウンスはまだないものの、毎年秋に開催されているヴィクシーこと、ヴィクトリア・シークレットのショーが今年は中止の方向で動いているようです。
以前ご紹介したように、美の多様性が求められるこの時代において、プラスサイズやトランスジェンダーのモデルを起用せず、バービー人形のような完璧なボディを持つモデルしか登場しないヴィクシーのファッションショーに、世間のバッシングが集中。
その後、バーバラ・パルヴィンのように健康的な体型のモデルがNewヴィクシー・エンジェルに加入したものの、批判の声は止まらず。
そのせいなのか、ヴィクシーモデルのシャニーナ・シェイクが、「残念ながら、今年はヴィクシーのファッションショーは開催されないのよ」という衝撃の事実を、The Daily Telegraphに語りました。「いつもならこの時期になると毎年、ショーのためにワークアウトしてたのに。何だか変な気分だわ」とシャニーナ。
23年間もの間、恒例となっていたショーが中止になった理由は明かされていませんが、先日も、元ヴィクシー・エンジェルのカーリー・クロスが、エンジェルを辞めた理由について、「世界中の若い女性たちに、美しさというものについて誤ったコンセプトを発信しているような気持ちになったから」とコメントしたばかり。
ヴィクシーのチーフ・マーケティング・オフィサーのエド・ラゼックは、去年11月にトランスジェンダーモデルを起用しないことについて聞かれ、「ショーは42分間のスペシャルなファンタジーなんだよ。そこにトランスジェンダーのモデルが必要だとは思えない」と答えて炎上していましたが、そんな事件も含めて、今回のショーのキャンセルは、一旦世論をクールダウンさせるための目的もあるのでしょうか。
カーリーのように、自らの影響力を重視するモデルだと、ヴィクシーのショーに出演すること自体を躊躇するケースも増えていそうですもんね。
以前“ヴィクシーと美のダイバーシティ”をテーマに書いた記事にも、様々な意見が寄せられ、この連載史上、最もコメント欄が白熱しましたが、個人的には、ヴィクシーという大企業が持つ社会的影響の大きさは重々承知の上で、ゴージャスなヴィクシーのショーを毎年楽しみにしていた人間として、残念な気持ちでいます。
それにしても、北米では今年59店舗の閉店を迫られているというヴィクシー。その事実こそが、この会社の掲げるコンセプトが時代遅れだということを物語っているのかもしれません。今年のショーの中止のあと、どんな風に方向転換していくのか。アメリカを象徴するような大きな企業ゆえ、それは現在の企業に求められる姿勢だけでなく、もしかしたら、今後の「美」の基準すらも変えていくような、大きな社会的ムーブメントの第一歩になりそうな予感がしています。
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