観終わった後の反応が
男女で全く違っていた

 

モデル雅子さんが残してくれたもの、私が残したいもの【大岡大介監督との対談】_img0
 

白澤 今回、私はトークイベントの回で映画を観たのだけれど、観終わった後に食事をしながら話した時、男女でこんなに見方が違うんだと思った。

大岡 と言うと?

白澤 男性は、自分が残されたときに(妻のために映画を作るという)これだけのことを、果たして愛する人のためにできるだろうか? というプレッシャーを感じたみたい。対して女性は、雅子さんという女性の美しさや人生、パートナーとの関係、仕事への向き合い方、色々なことがまぶしくて同じ女性として近づきたいという気持ちを抱いたと思う。

大岡 たしかに、男性寄りのイベント上映の際は、女性と反応が違っていて驚いたんだよね。「あれ、男はみんな引いてる…!?」って。

白澤  大岡くんは夫としてちょっと完璧すぎだよね(笑)。一般的に考えれば、相手に多くのことは求められない。ならば自分で残していくしかないなぁって。

大岡 あはは。貴子ちゃんなら何を残したい?


白澤 私は書き手だから、やはり言葉を残したい。子どもを含め大切な人たちに、捧げたい言葉がたくさんある。それをどんなふうに残したらいいんだろう、と映画を観た帰り道に考えたよ。
 

パートナーと観に行って
いろいろな話をして欲しい


大岡 僕自身、会社員として映画のビジネスの部分には携わってきたけど、ずっと、自分の力で映画を作ってみたいという思いはあって。そして僕と雅子さんはふたりとも”映画”という存在を愛していた。だから今回は二人の要素が重なって、映画という形になったわけなんだけれど。

白澤 そうだね。そういう意味で言うと、この映画は本当に、雅子さんから大岡くんへの素晴らしいプレゼントだなと思った。そして、映画を通して雅子さんの素晴らしさも、大岡くんの愛も伝わってくる。理想の夫婦像だな、と思いました。

大岡 ありがとう。

白澤 雅子さんはフランス映画に精通していたけど、フランス映画って結論がパンと出ないからあまり好きじゃない、という人もいるでしょう? でもあれってフランス人の特性で、彼らは「あー、スッキリした」という映画を観たいわけではなくて、その後ご飯を食べながら話をする題材が欲しいから映画を観る、というところがあって。私はこの映画もそういう一本だと思っているの。雅子さんという女性に対する感想ももちろんあるけど、もう一歩踏み込んで、自分たちに置き換えたときに自分はどうしたいか、パートナーにはどうして欲しいか、そういう話をするきっかけの映画でもある、そこを分かってもらえるといいなーと心底思ったんです。

大岡 映画を作った当初は、雅子というモデルがいてこんな生き方をしていました、というところが伝わればいいなあと思っていたんだけど、公開してみると貴子ちゃんの言うように、「夫婦で観に行って、こんな話をしました」というメッセージを、思いの他多くいただくんだよね。だから今は僕も、そういう見方もしてくれるといいなあ、と素直に思っている。

白澤 私、結婚直前のカップルとか、今パートナーを探しています、という知り合いがいたら、この映画のチケットをプレゼントしたいと思ったの。そうすると、パートナーの探し方が変わる気がするから。

大岡 たしかに、そうかもね。

白澤 あ、でも、この人じゃなかった!って別れちゃうカップルも出てきちゃうかもしれないね…。

大岡 それはそれで、いろいろ人生を見つめていただいて。

白澤 早めに気づいて良かったね、ということで(笑)。でもそれくらい、観る世代やステージによって感想がすごく変わると思う。多くの方がこの映画を観て自分やパートナーの人生について改めて考えられたら素敵な繋がりがたくさんうまれるね。

大岡 ありがとう。多くの方に観ていただけたらと心から思っています。

<映画紹介>
『モデル 雅子 を追う旅』

 

モデル雅子さんが残してくれたもの、私が残したいもの【大岡大介監督との対談】_img1
 

2015年に、希少がんで亡くなったモデルの雅子さん。夫である大岡大介さんは、「夫婦として共に生きながら、モデルとしての雅子をほとんど知らないままだった」と気づき、モデル・雅子の姿を映画にして伝えていこうと決意する。雅子さんを知る人たちのインタビュー、雑誌やCM、映画など雅子さんの出演作などを素に構成されたこの映画からは、プロフェッショナルを貫き続けた彼女の強さと美しさが浮かび上がっている。より美しく、より健やかに生きようと志す全ての女性に観てもらいたい一作。アップリンク吉祥寺、ほかにて全国順次公開。映画公式HP http://www.masakomonange.com/

配給: フリーストーン
出演:雅子/インタビュー出演(登場順):安珠、田村翔子、藤井かほり、髙嶋政宏、中田秀夫、石井たまよ、竹中直人他
監督・プロデューサー:大岡大介
©︎2019 Masako, mon ange.

撮影/片岡 祥
取材・文/山本奈緒子
取材協力/AVOSETA

前回記事「映画「モデル 雅子 を追う旅」旧知の大岡監督と対談【前編】 」はこちら>>

大岡大介さんのインタビュー「【モデル・雅子のがん闘病生活と夫婦愛】病の宣告、そして最期のとき」はこちら>>

 
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