妻子がある身で様々な女性と浮名を流し、挙句の果てに自殺未遂と心中未遂を繰り返した文豪・太宰治。9月13日公開の『人間失格 太宰治と3人の女たち』は、そんなダメ男の晩年を、彼に関係した3人の女性ーーふたりの子供を持つ妻・美知子、太宰の婚外子を産んだ愛人・太田静子、太宰との心中を完遂する山崎富栄ーーの生き方とともに描いた作品です。
今回は作品を手掛けた蜷川実花監督と、太田静子役を演じた沢尻エリカさんの対談をお届けします。かたや「ダメ男専門店」を自称する蜷川監督、「ダメ男には騙されない!」という沢尻さん、そのふたりが目の当たりにした太宰・小栗旬さんの魅力とは?そして、そんな男に騙されないためのマインドセットとは?

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いいねの数じゃない「自分の幸せ」の勝ち取り方【蜷川実花×沢尻エリカ対談】_img0
 


完成試写を見て「太宰、マジでクズだな」と思った


映画『人間失格 太宰治と三人の女たち』は、女性と入水自殺ーーつまり心中事件を起こした直後に、一人だけ助かって水から上がってくる場面から始まります。太宰の「人間失格」ぶりが一瞬でわかる場面です。

蜷川実花監督(以下、蜷川) 冒頭の場面、太宰が“死ぬかと思った”って言いながら水から上がってくる。あれはどうしても入れたかったんだよね。太宰のクズっぷりがよくわかる。

沢尻エリカさん(以下、沢尻) 今回、あえて自分のパート以外は読まずに演じてたから、それ以外の場面で太宰が何をやっているか、ほかの女性にどう対しているかは、完成作品を見て初めて知ったんだけど……マジでクズ男だよね(笑)。それぞれにいい顔してて。

蜷川 私のこれまでの人生は、わりと“ダメ男専門店”みたいな品揃えで(笑)。この作品にたどり着くための今までの人生だったのかなと思うくらい。今までの経験がいろいろ思い起こされて、ここはあの時のアレだな、演出できるぞと思いながら(笑)。

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沢尻 私は絶対にひっかからない。結構、男を見る目はあると思う。

蜷川 意外に、しっかりしてるからね。

沢尻 意外に、ダメ専にはならない。太宰ってかなり調子のいい男だもんね。

蜷川 私も仕事の上では、調子いいこと言う人には一切引っかからない。自分はこんな人と知り合いだ、とか、社会的にこんなに認められてるとかいう人いるけど、そういうのどうでもよくて。ただ色っぽい男が好きなのよね。そういう私の個人的な趣味は、たぶん映像の中に映っていると思う。

沢尻 確かに小栗君は、本当にそういうタイプにハマってた。とにかく、カッコよかったよね。

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©2019「人間失格」製作委員会

蜷川 相当難しかったと思うよ。女性から見て納得のいく色っぽさやチャーミングさを持つ太宰でなかったら、それが嫌味だったりとか説得力がなかったりして、”こんな男にひっかからないでしょ”ってなると、話自体が総崩れになっちゃうから。まあでも静子といるときは、全面的にカッコよかったよね。いわゆる“月9”に出てきそうな、めっちゃいい男ぶってるというか。特に山荘での密会で、お土産に持ってきた缶詰見せる時のドヤ顔とかすごかった(笑)

沢尻 ほんとそう(笑)、くどいくらいにカッコつけてて。

蜷川 でも同時にクリエイターの自分としては、そうならざるを得ない太宰の弱さと強さに共感する部分もあるんだよね。こういう仕事をしている人間が清く正しく生きるのってなかなか難しい、それができないからこういう仕事をしているわけで。だから現場では結構気持ちが忙しかった。女の子を撮ってる時は”太宰は本当にクズ、絶対にさっさと別れた方がいい!”って思うんだけど、太宰を撮ってる時は”あなたも辛いわね”って思ったり。

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他人からの評価が数値化されるほど、自分の幸せが見えにくくなる


本作品の前、7月には映画『Diner ダイナー』が公開され、NETFLIXでのオリジナルドラマ『FOLLOWERS』の全世界配信も間近に迫る蜷川監督。現場で過ごした1年は、「超」がつくほどの多忙の中にありながらも、モノづくりの幸せを存分に味わったのだとか。そんな蜷川さんが改めて思う3人の女性ーー「太宰の妻」の座を守り抜いた美知子、欲しかった「太宰の子供」を手に入れた静子、「太宰の最後の女」となった富栄のあり方は、「幸せ」のなんたるかを考えさせます。

蜷川 小説『人間失格』は、太宰が家族を捨て、人ではなくなる選択をして書いた作品なんだよね。もちろん私自身は子供がいることにとても満足しているし、子供がいなければ味わえなかった幸せがあると知っているけど、そうじゃない選択をしていたとしたら、どんなものを作っているんだろうなと考えたりもしたんだよね。

沢尻 私はあんまり今とは違う状況を考えたりはしないかな。お芝居している時とか、友達と会ってる瞬間とか、今ある日常の何でもないことが幸せ。高望みもしないし。

蜷川 今の時代って、情報量も多いし、SNSなんてフォロワー数とか“いいね!”の数とか、他人からの評価がすべて数値化されちゃうから、自分の幸せが見えにくいのかなって思う。でも本当はみんながどう思うかじゃなく、自分にとっての幸せと向き合い勝ち取れる人が多かったらいいのに、と思うんだよね。もちろんこの映画の三人の女性は、事実としては、亡くなっていたり、ひどい目にあわされたりしているけれど、見方を変えたら幸せなこともあったんじゃないかって。

沢尻 本当に実花さんの言う通り、恋愛に限らず、自分のしたいことや好きなことに貪欲に生きるって、すごく正しいことだと思う。そこから見えてくる世界っていっぱいあると思うし。

蜷川 “本人が幸せだと思えば、それが幸せなのである”っていうことだと思う。そのためには、やっぱり情報に踊らされたり、他人と比べたりしないことだよね。お金をたくさん持ってても、フォロワー数が多くても、幸せじゃない人もたくさんいるし。何をもって幸せとするか。もしかしたら現時点で十分幸せなのに、そこに自分の焦点が合ってないだけかもしれない。常日頃思っていることは、みんな自分の中にあるものと対話すべきなんじゃないかってこと。この作品が、そういうきっかけになるといいなと思います。

妖しくも美しい太宰×蜷川実花の世界観をぜひご堪能ください!

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©2019「人間失格」製作委員会

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沢尻エリカ 1986年4月8日生まれ、東京都出身。『パッチギ!』(2005/井筒和幸監督)で数々の新人賞を受賞し、同年のテレビドラマ「1リットルの涙」(CX)での高い演技力が評価される。主な映画出演作に『手紙』(2006/生野慈朗監督)や『クローズド・ノート』(2007/行定勲監督)、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した『ヘルタースケルター』(2012/蜷川実花監督)、『新宿スワン』(2015/園子温監督)、『不能犯』(2018/白石晃士監督)、『食べる女』(2018/筒井ともみ監督)、『億男』(2018/大友啓史監督)などがある。

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蜷川実花 写真家、映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007)、『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019年7月5日公開)、Netflixドラマ「FOLLOWERS」(2020年配信予定)監督。映像作品も多く手がける。2008年、「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回。2010年、Rizzoli N.Y.から写真集を出版、世界各国で話題に。2016年、台湾の現代美術館(MOCA Taipei)にて大規模な個展を開催し、同館の動員記録を大きく更新した。2017年、上海で個展「蜷川実花展」を開催し、好評を博した。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任。

<映画紹介>
『人間失格 太宰治と3人の女たち』


男と女に起こることのすべてがここにある

天才作家、太宰治。身重の妻・美知子とふたりの子どもがいながら恋の噂が絶えず、
自殺未遂を繰り返すー。その破天荒な生き方で文壇から疎まれているが、
ベストセラーを連発して時のスターとなっていた。
太宰は、作家志望の静子の文才に惚れこんで激しく愛し合い、
同時に未亡人の富栄にも救いを求めていく。ふたりの愛人に子どもがほしいと言われるイカれた日々の中で、
それでも夫の才能を信じる美知子に叱咤され、遂に自分にしか書けない
「人間に失格した男」の物語に取りかかるのだが・・・。
今、日本中を騒がせるセンセーショナルなスキャンダルが幕を明ける!

『人間失格 太宰治と3人の女たち』
9月13日(金)ロードショー
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公式サイト:http://ningenshikkaku-movie.com
Instagram:https://www.instagram.com/NSmovie2019
Twitter:https://twitter.com/NSmovie2019
★ハッシュタグ:#映画人間失格
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監督:蜷川実花
出演:小栗旬 宮沢りえ 沢尻エリカ 二階堂ふみ
成田 凌 / 千葉雄大 瀬戸康史 高良健吾 / 藤原竜也
脚本:早船歌江子、音楽:三宅純 撮影:近藤龍人
主題歌:東京スカパラダイスオーケストラ「カナリヤ鳴く空feat.チバユウスケ」(cutting edge/JUSTA RECORD)
配給:松竹、アスミック・エース
© 2019 『人間失格』製作委員会

【問い合わせ先】
ショールーム セッション tel. 03-5464-9975
ブランドニュース tel. 03-3797-3673
ビジュードエム ギンザシックス tel. 03-6264-5436
YELLO www.yelloshoes.com

撮影/田中恒太郎
ヘア&メイク/冨沢ノボル(CUBE・蜷川さん)、高村三花子(沢尻さん)
スタイリング/斎藤くみ(蜷川さん)、亘つぐみ(angle・沢尻さん)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)

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