妻子がある身で様々な女性と浮名を流し、挙句の果てに自殺未遂と心中未遂を繰り返した文豪・太宰治。9月13日公開の『人間失格 太宰治と3人の女たち』は、そんなダメ男の晩年を、彼に関係した3人の女性ーーふたりの子供を持つ妻・美知子、太宰の婚外子を産んだ愛人・太田静子、太宰との心中を完遂する山崎富栄ーーの生き方とともに描いた作品です。
今回は作品を手掛けた蜷川実花監督と、太田静子役を演じた沢尻エリカさんの対談をお届けします。沢尻さんの「少女性」を愛する蜷川監督と、監督の世界観を愛する沢尻さん、『ヘルタースケルター』以来のタッグで、改めて感じたお互いの魅力とは?

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エリカって、可愛くてピュアで不器用なのに爪はとがってる、みたいな人


蜷川実花監督の『人間失格 太宰治と3人の女たち』で、太宰治の死の直前に、娘を設けた太田静子は、作家を志す良家の可憐なお嬢様。華族の没落を内側から描いた太宰のベストセラー小説『斜陽』は、彼女が綴った日記を元に書かれたものです。このところの出演作では、クールで都会的な「デキる女性」を演じることが多かった沢尻さんですが、蜷川さんはそれとは異なる、沢尻さんが持つ素の部分に、この役との共通点を見ていたのだとか。

蜷川実花監督(以下、蜷川) 『ヘルタースケルター』から、かれこれ7年だね。

沢尻エリカさん(以下、沢尻) そうそう。あの役はダークでヘビーで、撮影がすごくきつかった記憶があるから、今回もオファーを受けたときは、実花さんの作品だし……と身構えていたんだけど、脚本を読んだら、ただただ恋に恋をしているかわいい女性で。楽しめそうだなと思って、やります!と即決しました。

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©2019「人間失格」製作委員会

蜷川 エリカがやってくれると決まってから、エリカのイメージで脚本を少し変えたのよね。静子って、すごくマイペースというか、自分があるというか、意外と揺らがないじゃない? そこに、エリカが持つ“少女性”と、それゆえの強さみたいなことを加えたら、またすごくキャラクターが立つんじゃないかなあと思って。エリカって、本当にかわいいし素直だし、他には見当たらないほどピュアで不器用なのに、爪はとがってる、みたいなタイプでしょ(笑)。でもそういうところが反映されてる役を演じてるのって見たことがないので、それをそのまま出したいなって。だからいかに楽しく、普段どおりに笑ってもらうかが、今回の私の使命だった。

沢尻 私としては、とにかくもう、ウキウキルンルンで。こんな、可愛いしかない!っていう演技、私、見せたことがないよね(笑)。

蜷川 現場はみんな、エリカの可愛さに魅了されてたもん。

普通の現場の3倍増しの山盛りの花の上で……


蜷川映画といえば、魅力はその妖しくも美しい世界観。昭和初期のクラシックな時代を舞台にした今回の作品では、セット、衣装、色彩感覚、和の美しさなど、その感性がより強い魅力を発しています。そしてもちろん、蜷川作品といえば、あふれんばかりに使われる「花」。沢尻さんが特に驚かされた場面とは?

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©2019「人間失格」製作委員会

蜷川 今回は登場する女性3人のテーマカラーと花みたいなものは決めていて。宮沢りえさん演じる正妻の美知子はブルーや紫系で凛としたもの。二階堂ふみちゃん演じる愛人の山崎富栄はベースの色は揺れ動きながらアクセントに赤を。エリカが演じる静子はとにかくピンク!とにかく愛らしくって決めてたの。

沢尻 ここまで徹底的にピンクの衣装って、なかなか着た作品ない(笑)。私は実花さんの映像の世界観がすごい好きなんだけど、セットだったり美術だったりが、あんなに明るくてワクワクする楽しい現場って他にはない。今回は、特に印象に残ってるのは、太宰と密会する熱海の山荘の場面かな。あのテーブルの上で……。

蜷川 花が山盛りになっているの(笑)。

沢尻 ここで太宰と絡んでください……って、ええええ、ここで?!っていう。さすが実花さんだなと。

蜷川 私も、あれびっくりした(笑)。美術チームに“テーブルの上に花、置きますか?”って聞かれたから、“うん、置いといて”って言ったら、ああなってて。私も“この上!?すごいな!”って思った。

沢尻 ドライフラワーだから、寝っ転がるとカサカサカサカサいって、動いてるうちに花まみれになっちゃって。

蜷川 最近の映画はわりとチームが決まってきていて、美術周りは同じスタッフが担当してくれてるから、何も言わなくても過剰になる。特に花は“通常の現場の3倍増し”で。まあでも、いっか、静子だし、という具合に。静子が自分で花摘んできて、敷き詰めたのかな~!とも思って(笑)。

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沢尻 今回、私は自分の役のところしか脚本を読まずに現場に臨んだから、最近になってようやく作品の全貌を見たんだけど、これはまた大変だっただろうなって。

蜷川 エリカは撮影が最初と最後に分かれてて、1か月くらい間が空いたもんね。

沢尻 久しぶりに現場に戻った時、どうりでみんな、疲れていたわけだ、って。

蜷川 そんななか、エリカが“どうしたの?みんなめっちゃ疲れてるじゃん”みたいな感じで、ピチピチしながら戻って来たという(笑)。でもよく考えてみるとエリカも結構いろんなハードなシーンをやってるんだけど、“超楽しかった~!ばいにゃ~い!”みたいな感じで現場を去っていって、本当にこの人強いなっていうか、オモロイなーと。

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ダメ男に振り回されているようで、欲しいものを手に入れた女性たち


太宰の晩年を描いた作品は、実は好き放題に生きる「ダメ男」太宰に、3人の女性がとどめを刺す映画と言えなくもありません。沢尻さんをはじめ、存在感あふれる3人の女優によって体現された女性の強さこそが、蜷川監督の描きたかったものだったようです。

蜷川 太宰で映画を撮ることになった時、“振り回されていたようで、自分の欲しいものはきっちり手に入れた女性たち”っていうのが描けないかなって思いながら資料を読み込んでいて、出てきたのが3人だったんだよね。中でも静子は最強。すごく幸せそうに赤ちゃんを抱っこしてる、あの画力(えぢから)。半端なかった(笑)。

沢尻 太宰と不倫して彼の子供を産む、そのこと自体は全然正しいとは思わないけど、周囲とは無関係に、ただ純粋に、自分の気持ちにストレートに生きてるのはすごいなと。そうやって生きられる人ってなかなかいないと思うから、みんなすごく羨ましいって思うんじゃないかな。まあ私も結構そういう風に生きてますけど(笑)。

蜷川 彼女たちの手記も読んで、字面だけ追えば悲劇のヒロインのようにも見えるんだけど、強さももっていた女性たちだと思う。どこまでリアルに見えるかはわからないけど、見た人たちがどこか一部分だけでも“分かる!”って思ってもらえたらいいなと思いながら作りました。

妖しくも美しい太宰×蜷川実花の世界観をぜひご堪能ください!

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蜷川実花 写真家、映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007)、『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019年7月5日公開)、Netflixドラマ「FOLLOWERS」(2020年配信予定)監督。映像作品も多く手がける。2008年、「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回。2010年、Rizzoli N.Y.から写真集を出版、世界各国で話題に。2016年、台湾の現代美術館(MOCA Taipei)にて大規模な個展を開催し、同館の動員記録を大きく更新した。2017年、上海で個展「蜷川実花展」を開催し、好評を博した。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任。

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沢尻エリカ 1986年4月8日生まれ、東京都出身。『パッチギ!』(2005/井筒和幸監督)で数々の新人賞を受賞し、同年のテレビドラマ「1リットルの涙」(CX)での高い演技力が評価される。主な映画出演作に『手紙』(2006/生野慈朗監督)や『クローズド・ノート』(2007/行定勲監督)、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した『ヘルタースケルター』(2012/蜷川実花監督)、『新宿スワン』(2015/園子温監督)、『不能犯』(2018/白石晃士監督)、『食べる女』(2018/筒井ともみ監督)、『億男』(2018/大友啓史監督)などがある。

<映画紹介>
『人間失格 太宰治と3人の女たち』


男と女に起こることのすべてがここにある

天才作家、太宰治。身重の妻・美知子とふたりの子どもがいながら恋の噂が絶えず、
自殺未遂を繰り返すー。その破天荒な生き方で文壇から疎まれているが、
ベストセラーを連発して時のスターとなっていた。
太宰は、作家志望の静子の文才に惚れこんで激しく愛し合い、
同時に未亡人の富栄にも救いを求めていく。ふたりの愛人に子どもがほしいと言われるイカれた日々の中で、
それでも夫の才能を信じる美知子に叱咤され、遂に自分にしか書けない
「人間に失格した男」の物語に取りかかるのだが・・・。
今、日本中を騒がせるセンセーショナルなスキャンダルが幕を明ける!

『人間失格 太宰治と3人の女たち』
9月13日(金)ロードショー
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公式サイト:http://ningenshikkaku-movie.com
Instagram:https://www.instagram.com/NSmovie2019
Twitter:https://twitter.com/NSmovie2019
★ハッシュタグ:#映画人間失格
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監督:蜷川実花
出演:小栗旬 宮沢りえ 沢尻エリカ 二階堂ふみ
成田 凌 / 千葉雄大 瀬戸康史 高良健吾 / 藤原竜也
脚本:早船歌江子、音楽:三宅純 撮影:近藤龍人
主題歌:東京スカパラダイスオーケストラ「カナリヤ鳴く空feat.チバユウスケ」(cutting edge/JUSTA RECORD)
配給:松竹、アスミック・エース
© 2019 『人間失格』製作委員会

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ブランドニュース tel. 03-3797-3673
ビジュードエム ギンザシックス tel. 03-6264-5436
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撮影/田中恒太郎
ヘア&メイク/冨沢ノボル(CUBE・蜷川さん)、高村三花子(沢尻さん)
スタイリング/斎藤くみ(蜷川さん)、亘つぐみ(angle・沢尻さん)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)