吉本ばななさんと平良アイリーンさんによる『ウニヒピリのおしゃべり ほんとうの自分を生きるってどんなこと?』(講談社)が8月に刊行されました。それに先立ち開催された講演会には、吉本さんとアイリーンさん、そしてアイリーンさんのお母様で、SITHホ・オポノポノアジア事務局代表の平良ベティーさんが出席。前後編でお届けしているレポートの後編では、大きな会場を満席にした来場者たちからの質問とその回答から、自分らしく生きるヒントを拾っていきます。

 
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【SITHホ・オポノポノとは】
ネイティブハワイアンの伝統的な問題解決法「ホ・オポノポノ」。これを、ハワイ伝統医療のスペシャリストで「ハワイの人間州宝」(1983)故モーナ・ナラマク・シメオナ女史が現代社会で活用できるようにアレンジしたのが「セルフ アイデンティティ スルー ホ・オポノポノ(SITH)」です。平良ベティーさん(写真左)は、SITHホ・オポノポノ・アジア事務局代表、 平良アイリーンさん(写真右)は、広報担当を務めています。


ハワイに伝わる問題解決メソッド“ホ・オポノポノ”とは?


そもそも、吉本ばななさん、平良母娘の三人が実践している“ホ・オポノポノ”や、本のタイトル『ウニヒピリのおしゃべり』にある“ウニヒピリ”とは、何なのでしょうか。 “ホ・オポノポノ”とは、ハワイ語で「過ちを正す」ことを意味します。古代からハワイに伝わる問題解決法で、主な実践方法は、溜め込んだ記憶を消去“クリーニング”すること。その鍵を握っているのが、“ウニヒピリ”=インナーチャイルド(内なる子供)です。

「“ウニヒピリ”の声を聞き、自分をないがしろにせず大切に扱い、クリーニングを実践していくことで、不必要な記憶は消去され、『ほんとうの自分』を取り戻し、あなたのリズムとペースで、あなたにしかない才能を発揮して生きていくことができます」(p25-26)と本にはあります。会場の方々からの質問に対する、吉本さんやベティーさんの答えには、より豊かな人生を送るためのヒントに溢れ、ホ・オポノポノを実践してみたくなります。

Q “心の声を聞く”というのは、どういうことなのでしょうか。

平良ベティーさん(以下、ベティー) 自分がしたいことをしてあげると、ウニヒピリ(=インナーチャイルド)との間に信頼関係が生まれ、傷つきたくないから誰にも言わないできた本音がどんどん出てきます。今日、あなたがここに来たこともそう。自分がしたいと思ったことを、その声に信頼を置き、できることから始めてください。

吉本ばななさん(以下、吉本) 私の場合、カラダに出てきます。たとえば、面白くない映画を観て、寝てしまうとか(笑)。でも、面白すぎて寝てしまうこともあるんです。その違いは、自分の中ではすごくハッキリしているんです。退屈だからなのか、面白くて気持ちがよかったからなのか、単に疲れていたのか。まずは、ハッキリしていることに気づくこと。繰り返し聞いてあげて、「本当はこう思っていた」という気づきを積み重ねていくと、ウニヒピリの声が聞こえてくると思います。

Q 自己肯定することがすごく難しいです。ウニヒピリと対話することは、自己肯定が繋がっていくのでしょうか。

ベティー 私は、自分を無視しながら生きてきたので、ホ・オポノポノを知ってから4年くらいは、(記憶を消去するクリーニングを代表する)4つの言葉、「ありがとう」「ごめんなさい」「許してください」「愛しています」のうち、「ごめんなさい」「許してください」だけをずっと言っていました。そうしていくうちに、ウニヒピリがいるんだとしっくりくる瞬間があったんですね。自分を肯定できない、信じられない感覚に向けて、「ごめんね」と言ってあげてください。そうすると、ある日、雲が晴れるのではないでしょうか。

吉本 クリーニングを始めて3年くらい経つまでは、原因と結果を直結させて考えがちでした。結果が出なくても、続けてみてください。 “適当”でいいです。すごく不思議ですが、適当にやればやるほど、なんだか見えてきたぞとなってきますから。そうすると、どんどんウニヒピリと仲良くなり、阿吽の呼吸で対話できるようになります。その日が必ず来るので、楽しみにしていてください。

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Q 恋愛に執着してしまうところがあります。自分の中の子どものウニヒピリは「彼と離れたくない」と言います。大人の自分としては子どもにあきらめてほしいのに、折り合えません。

ベティー ウニヒピリはあなたの感情そのもの。ウニヒピリの声は、彼ではなく、あなた自身を愛してくれている声なんです。「彼が恋しい、寂しい、私のものになって」といった思いは、子どものウニヒピリがお母さんであるあなたに「こっちを見て、愛して」という訴え。そう捉えてクリーニングしていくと、自分を求めている子がいる安心感や、愛しい自分をありがたく感じられると思います。

吉本 聞いていて思ったのは、もしかして大人と子どもが逆なのでは? 彼が好きでなんとかしたいと思っているのは大人のほうで、子どものほうが「やめておいたら」と言っている。そう考えると、「しょうがないよね、恋愛だから」とラクになるような気がしました。子どもの言うことを聞いたからこうなってしまったと責めるよりも、そう考えたほうが、ちょっとだけ扉が開くと思います。

Q 最近、お二人が嬉しかったり、いいと思ったことは?

吉本 NETFLIXの『DEVILMAN crybaby』(※永井豪原作漫画「デビルマン」のアニメ化作品)。描かれているのは、けっして明るい世界ではないのですが、10話一気見したら、私もまだまだやれると思って、本当に感動しました。それと、2ちゃんねる! どちらかと言うと苦手で、読んでるだけで嫌だなと思ってたんですが、2ちゃんねるに書き込んでいる人達が、急に優しくなる瞬間ってあるんです(笑)。この間は、モスバーガーのハンバーガーのソースが残ってもったいないから、誰か食べ方を教えてくれというスレッドがあって。「俺の地方ではこうやるんだが~」って書いてあるんだけど、その人はあまり説明が上手くないんです。みんながわかってくれないから、しばらくモスバーガーは食べないって拗ねてしまったら、「大丈夫だよ!」ってみんな励まし始めて。荒れた世界に優しい空気が生まれて、感動しました(笑)。

ベティー 私も『DEVILMAN crybaby』を観たいです(笑)。私にとっては、二人の孫の存在が大きいですね。彼らは、興味を持ったものを純粋に見ているんです。孫たちの視線を追いかけ、彼らのように好奇心を持って物事を見てみると、見えなかったものが見えたりすることに感動します。

Q 『ウニヒピリのおしゃべり』に収録されている短編小説で、主人公がかばんにウニヒピリが安心するアイテムを入れています。そうしたアイテムは、みなさんお持ちですか?

吉本 どうしても持っていなければいけない、実用的なものってありますよね。充電器とか、持ちたいと思わないデザインのものと、かわいいと思うものを一緒に持ち歩いたり、きれいなポーチに入れたりすることはあります。私がかわいいと思うものは、たとえば、銀杏とか(笑)。今日、持っているカバンについているストラップもそう。カバンより重いんですけど、重さを考えずにつけてみる。そういう気持ちの遊びを持っていると、毎日ちょっとずつ違ってきますね。心が癒されるというよりは、そういう“遊び心”を心は欲しがっているのだと思います。

ベティー 今、ミニマリストになろうとしているので、モノそのではなく、色で遊ぶようにしています。グリーンを見るとウニヒピリがすごく喜ぶような気がするので、グリーンの腕時計をしたり、ワクワクする色を選んでいます。

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吉本ばなな 1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は三十数ヵ国で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞(Under35)、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『切なくそして幸せな、タピオカの夢』『吹上奇譚 第二話 どんぶり』ほか。

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平良ベティー IZI LLCが主宰するSITHホ・オポノポノ クラスの認定コーディネーター。2008年にSITHホ・オポノポノ アジア事務局を設立し、代表を務める。日本、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール、中国などアジア諸国にて同クラスを運営し、日々クリーニングを実践している。

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平良アイリーン 1983年、東京生まれ。明治学院大学文学部卒業。2007年にホ・オポノポノと出会って以来、生活のあらゆる場面で実践中。現在はSITHホ・オポノポノ・アジア事務局広報担当として、日本をはじめアジア各国の講演会の際に講師に同伴し活動している。また、ヒューレン博士やKR女史のそばで学んだ自身の体験をシェアする講演活動を行っている。著書に『ホ・オポノポノジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』、翻訳書に『ホ・オポノポノライフ ほんとうの自分を取り戻し、豊かに生きる』『ハワイの叡智ホ・オポノポノ 幸せになる31の言葉』ほか。

インタビュー前編「吉本ばなな「自分に嘘をつかない生き方」を叶えるため実践していること」はこちら>>
 

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<新刊紹介>
『ウニヒピリのおしゃべり』

吉本 ばなな  平良 アイリーン 著 1800円 講談社


世界で知られる小説家の吉本ばななさんと、ハワイに伝わる問題解決法「ホ・オポノポノ」を通じて、自分らしさを模索する平良アイリーンさん。ホ・オポノポノの鍵となる、ウニヒピリ(内なる子供)との対話によって、なぜ生きやすくなるのか、二人が語らい合った対談集。仕事、人間関係、子育てと、何かに悩む人に響く言葉が詰まっている。2010年、『Grazia』に掲載された吉本ばななさんとの短編小説「ウニヒピリ 自分の中の小さな子ども」も再録。


取材・文/小泉咲子
 撮影・構成/川端里恵(編集部)