「頭のいい女はモテない」、「女は数学が苦手」などの刷り込みに、できないふりをしたり、できないふりをしているうちに本当にできない人になってしまったり……そんな「女の損の見えずらさ」について、脳科学者の中野信子さんと、コラムニスのジェーン・スーさんが語った共著『女に生まれてモヤってる!』が話題です。今回は、中野さんに「声を上げる人」が攻撃されやすい理由や対応策を伺いました。
“自分の意見を言う人=和を乱す悪い人”と判断する人間の脳の特異性
研究者、科学者としての華やかな経歴を持つ中野さんですが、“そんなに勉強が出来ると結婚できない”“男だったらよかったのに”といった家族からの言葉や、“東大の女は結婚できない”といった言葉に、不公平だ、男になりたいと思ったこともあったと言います。
そうした生きづらさから、中野さんが解放されたひとつのきっかけは、2008年に研究者としてフランスに渡ったこと。もちろん同国でも「女は男より頭が悪い」と思われているところはあったし、「女性はセクシーでないと」という圧力は日本以上に強かったのですが、ある一点が大きく違いました。それは、フランスでは「どんなくだらない意見であっても、意見を言わない人よりはずっと価値がある。意見を表明すること自体が大事」と考える人が多かったことです。
「日本は“自分の意見を言う人=和を乱す悪い人”という感覚があり、もし“黒は白だ”という集団の合意がある中で、“いや違う。黒は黒だ”と言えば、その人は悪のように言われてしまいます。個人よりも集団を優先すること――つまり社会性は、ある程度は仕方のない人間の性質なんですね。
“いや、集団より個人の方が大事だよ”と言う人もいると思いますが、よくよく考えてみてください。例えば自己犠牲的な振る舞い――我が身を省みず誰かを救ったとか、 私財をなげうって災害援助したとか、という話に、私たちは誰もが感動しますよね。これは“個人を維持する選択と、集団を維持する選択がぶつかり合ったときに、集団の維持を選択させる回路”が備わっていて、そのほうが美しい、それが正義だと思うようにできているからなんです。同じ回路が、個人的には“黒だ”と判断した時でも、集団が“白だ”といえば、それを受け入れてしまう。この回路がある前頭前皮質は、より複雑な社会を作るうえで非常に大きく寄与していて、人間で特異的に大きく発達している部分なんです」
もちろん集団の意思、そのものを変えることは可能です。
「#MeToo問題もそうですが、ひとりで声を上げないことです。一番有効な方法は、みんなで一斉蜂起。もしくは粘り強くジワジワやっていくこと。今は、ジワジワは来ていますよね。 女性が働くことは当たり前になっているし、LGBT に対する意識も変わってきています。私は子どもがいませんが、そのことについて、少なくとも面と向かって責められる時代は終わりつつあります」。
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