子どもに発達障害があると分かった時に親はどう対応すればよいのか、しつけと体罰の境界線は?etc.……、子育てに関するさまざまな情報が溢れる昨今。親たちはただ自分たちの子を「よい子に育てたい」と思いながら、「何が子育ての正解か正直分からない……」と思っている人が少なくないのではないでしょうか。
児童精神医学の第一人者として著名な杉山登志郎医師は、子育ての基本を書いた著書『子育てで一番大切なこと 愛着形成と発達障害』 (講談社現代新書)で、「いくつかの大事なことだけ押さえておけば、子供はじぶんで成長し、しっかり育っていきます」というメッセージを送っています。
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よい子に育つ“コツ”というものは存在しない
多くの親やマスコミは、「よい子に育てるための“コツ”は何でしょうか?」と聞く。しかし、「これはしないほうがいい」ということは分かっても、「これはしたほうがいい」ということは断定することができない。
たとえばタバコの場合、吸うと不健康になる道筋は明らかだ。だが吸わなければ健康が保証されるかというと、そうではない。タバコを吸わなくても肺がんになる人もいるからだ。同様に、誰しもがよい子になれるコツというものも、おそらく存在しないだろう。
たとえば子供に関心を持たず、全く声がけをしなかったらネグレクト(育児放棄)で、とんでもないことが子供に起きてしまうのは当然だ。だがずっと子供を見続けて、一挙手一投足に声がけをすることが素晴らしい子育てなのかというと、それは疑問だ。
また子供には個人差があって、子育ては子供本人の気質の違いでかなり左右されるものでもある。子育てのコツを一般論にして語るのは、不可能に近いというのが事実だ。
種としてのヒトの子供は、少なくとも生まれてしばらくの時期は脆弱な存在であるのは確かだ。全面的なケアが必要だし、中学生になっても親の存在は重要だ。子育ての期間はとても長いと言っていい。
しかも環境のみで子供の性質が決まるわけではない。子供たちの持っている生まれながらの気質、つまり遺伝的な素因で、ある子には良いことが別の子にとっては悪いこともある。
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