学校に通わず、YouTuberとして活動している少年「ゆたぼん」が話題になってからしばらく経ちますが、ネットでは不登校の是非について、まだ議論が続いているようです。日本では2017年から教育機会確保法が施行されており、不登校の子どもに対する支援が法律で定められています。一部ではホームスクールを可能にしようという動きも出ているようですが、子どもに対する教育はどうあるべきなのでしょうか。

 

今年の5月、学校に行かない選択をした10歳の少年、中村逞珂(ゆたか)さんが、「ゆたぼん」という名前でYouTuberとして活動していることがメディアで取り上げられました。

ゆたぼんは、小学校3年生の時に宿題を拒否したことがきっかけで不登校になり、その後、親子で沖縄県宜野湾市に移住。ユーチューバーとしての活動を開始し、「不登校は不幸じゃない」といったメッセージを発信しています。

あえて学校に通わないという主張に対して、ネット上では賛否両論となり、地上波のバラエティ番組に取り上げられるまでに拡散。多くの論者がゆたぼんについてコメントする状況となりました。彼が大きな話題になってから、3カ月以上が経過していますが、今でもネットでは、学校に行くことの是非について激論が続いています。

説明するまでもありませんが、日本の教育制度において小学校と中学校は義務教育となっており、親には子どもを学校に通わせる義務があります。単純に考えれば、ゆたぼんの両親は義務を果たしていないという解釈になるでしょう。ただ、義務教育については、多くの人が少し勘違いをしている部分があり、これが問題を複雑にしているようです。

小学校と中学校が義務教育となっているのは、子どもが教育を受ける権利をしっかりと保護することが目的であり、苦役として義務を果たさなければならないというものではありません。

日本は民主国家ですから、基本的人権はいついかなる時でも保障される必要があります。そして、教育を受ける権利というのは、現代社会においてはもっとも重要な権利のひとつといってよいものです。しかしながら、親の中には、子どもの扶養を放棄し、子どもが教育を受ける権利を踏みにじる人が一部存在します。義務教育というのは、こうした人たちから子どもを守るために存在するということを私たちはよく理解しておく必要があるでしょう。

筆者自身は、子どもは可能な限り学校に通った方がよいという立場ではありますが、ゆたぼんの場合には、(その方針がベストなのかはともかくとして)両親が子どもの教育に対して明確な方針を持ち、ゆたぼん自身も、子どもとはいえ、ある程度、自主的にこの方針を受け入れていますから、彼が教育を受ける権利を親によって侵害されているわけではありません。したがってゆたぼんが学校に通っていないことだけをもって義務を果たしていないというのは少し言い過ぎでしょう。

 
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