恋愛は神風ではない。恋愛関係も突き詰めれば人間関係


この漫画の面白さの一つに、主人公・ユリカの脳内会議(自問自答がビジュアライズされている!)だけでなく、途中からモトカレ・マコチの脳内会議(自問自答)シーンも出てくることがあるように思います。瀧波さんは、
「まったくマコチの考えがわからない展開のまま、行動だけをユリカ目線で見ていると、読んでいるほうも“マコチ最低!”で終わっちゃいますからね。男の人なりにこういう考えがあったのねと。最初からわかっちゃうとアレなので、種明かし的に入れるようにしています。

読者さんが神の視点に立てるわけですが、今は正解がない時代なので、こういう自問自答をビジュアライズするのはトレンドの1つになっている気はします」

ユリカとマコチを見ているとありがちなコミュニケーションがズレるポイントや、男性と女性の発する言葉の重みの違いが手に取るようにわかるのも興味深いのです。

男女の人生ステージへのズレが一番激しいのが20代後半だと思うんです。女性は結婚や出産、人生設計について考え始めるけれど、多くの男性は、夏休み初日の小学生くらい(笑)。“かわいいと思っているよ”というマコチの言葉も、発した側と受け取る側では、重みが全然違いますからね」と瀧波さん。恋愛下手な人が中年以降で急に上手になることはないと思うものの、瀧波さんにアドバイスを聞いてみると、

「恋愛関係も人間関係のひとつなので、コミュニケーション能力が高い人は、やっぱりモテますね。要は気持ちの伝え方なので、その相手にちょうど良い量で――重すぎることもなく、軽すぎることもなく――気持ちを伝えられる人は強いです。恋愛は神風ではないから、相手に何か主張する前には段取りが必須。自分がどう考えているか、どうしたいのか、順序立てて伝えることですよね。1回1回が大事だとも思います。付き合って別れてと繰り返している人より、一人の人と長く付き合っている人のほうが、だんだんとそれが分かってくるのではないかと思います」

物語が続いていく中で、もう一人の重要な人物が登場します。それは、成功しているアラフォー独身女流作家のさくらさん。彼女はなんとマコチと“清らかな同居”関係にあるのですが…!?

「私の年齢にはさくらさんのほうが近いですね。この年になると、恋人ではなくても“そばにいてほしい人”という枠が出てくるんじゃないかと。

マコチが同居できる相手ってどんな人だろう?と考えたときに生まれたのがさくらです。恋しちゃうと相手に望むのは、“ここにいて楽しい”ではなくて、“私を好きになってほしい”じゃないですか。それって、苦しいと思うんです。でも、ここにいて楽しいだったら、まぁお金があればできることが多いかな(笑)。

例えば……年下の異性に囲まれて遊びたいなら、彼らが未経験のおいしい食べ物や楽しい場所、人脈を提供したりして“この人と一緒にいると楽しい”と思ってもらえばいいから。

30後半までに誰しも“ここからはみ出すと苦しい”と徹底的に学習しますよね。さくらさんにしても、“好きになってほしい”“結婚してほしい”と望んだ時点でツラくなるのはわかっているんです。“この部屋に帰ってくるのが楽しい”という範囲なら、ツラくもならずに自分の要望が叶えられる。これなら万事OK◎ですよね」

なるほど!“自分といると楽しい”と思ってもらう――婦人世代に響く格言ですね!

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漫画家 瀧波ユカリ
1980年北海道札幌市生まれ。漫画家。日本大学藝術学部写真学科卒業。著書に漫画『臨死!! 江古田ちゃん』、『あさはかな夢みし』、『モトカレマニア』(いずれも講談社)、エッセイ『はるまき日記』(文春文庫)、『女もたけなわ』(幻冬舎文庫)、『オヤジかるた』など。

 

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<新刊紹介>
『モトカレマニア』

瀧波ユカリ(講談社)


難波ユリカ・27歳。22歳のときに別れた元カレ・マコチの存在を引きずり、彼の名前を検索したり、心の中で会話したりと、順調にマコチを神と崇めつつ、元カレのマニアとしての日々を過ごしていた。ところが心機一転、新たに働くことになった不動産店には、愉快なメンバーとあの人がいて…!?元カレの存在が気にかかる全女子必見!!崇拝と恋愛の間で揺れ動く、爆笑必至のノンストップ・ラブコメディ!ドラマ化記念の新木優子さん&高良健吾さんバージョンの新カバーも要チェック!

 

<ドラマ情報>
フジテレビ系 木曜劇場『モトカレマニア』

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≪放送日時≫
10月17日スタート 毎週(木)22時~22時54分
(初回15分拡大 22時~23時9分)

≪キャスト≫
新木優子 高良健吾 浜野謙太 田中みな実 よしこ(ガンバレルーヤ) 森田甘路
関口メンディー(EXILE/GENERATIONS) 加藤虎ノ介 大地 井上翔太 ・ 小手伸也 山口紗弥加

≪原作≫
瀧波ユカリ
『モトカレマニア』(講談社「Kiss」連載)


≪脚本≫
坪田 文
『コウノドリ』シリーズ、映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』 他


≪主題歌≫
超特急『Revival Love』(SDR)


≪プロデュース≫
草ヶ谷大輔
『トレース~科捜研の男~』、『コンフィデンスマンJP』シリーズ 他


≪演出≫
並木道子
フジテレビ開局60周年特別企画『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』 他
相沢秀幸
『トレース~科捜研の男~』、『グッド・ドクター』 他


撮影/塚田亮平
取材・文/藤本容子(編集部)
構成/川端里恵(編集部)
 
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