東京都美術館で開幕した「コートールド美術館展 魅惑の印象派」。

写真によるコートールド邸の再現。(「コートールド美術館展」より)

ロンドン・テムズ川河畔にあるコートールド美術館。大富豪コートールド氏のコレクションが礎となって誕生した、印象派などフランス近代絵画の美の殿堂です。その美術館所蔵の名作が、この秋こぞって来日、話題を呼んでいます。
マネ最晩年の傑作『フォリー=ベルジェールのバー』、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン……。この秋、上野に集結する巨匠たちの傑作。冨田 章著『代表作でわかる 印象派BOX』を参考に、卓越した審美眼を持つコートールド氏が集めた名品を見てみましょう。

 
エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年 油彩、カンヴァス 96×130cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

マネ(1832-83)最後の大作『フォリー=ベルジェールのバー』。フォリー=ベルジェールは、パリで人気のカフェ・コンセールでした。アトラクションを催すミュージックホールは、ガス灯が燈り、夜も出歩くブルジョワジーが増えた時代の象徴とも言えます。マネが描いた近代化の進むパリの生活。
カウンターに立つこの女性のうつろな視線の先には何があるのでしょうか。

『代表作でわかる 印象派BOX』p.40-41

フォリー=ベルジェールの中のバー、カウンターの女性の背後にあるのは大きな鏡。余興に見入る観客席の様子が映っています。画面右側には、ややずれていますがカウンターに立つ女性の後ろ姿。その正面に立つ男性の姿。つまり、正面から絵を見ている私たちは、この女性の正面に立つ男性なのです。虚ろな表情の女性。賑わう店内での孤独。投げかけられる視線は、「現代」に迫るマネの視線でもあるのでしょうか。
ワインやシャンパンの並ぶ中、赤い三角形が商標の「バスペールエール」。これはナポレオンが好きだったというビールです。この傑作はマネが亡くなる前年、1882年に描かれました。


パリの華やかな社交の場を描く


ブルジョワの都市生活をモチーフにした一枚。劇場の桟敷にいる男女を描いたこの作品は、第1回印象派展に出品された。黒と白が基調の作品であるが、暖色系の色彩を巧みに配することで、華やかな作品に仕上がっている。男性は舞台そっちのけで他の観客ウォッチングに余念がない。劇場が社交の場でもあったことがわかる。(『代表作でわかる 印象派BOX』より)
さて、男性の視線の先にあるものは?

ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874年 油彩、カンヴァス 80×63.5cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

 

南の楽園・タヒチで見出した「生と死」


「原始の生命力」を求めて2度めのタヒチ行きを決行したゴーガンが、1897年に描いた大作。恐怖に慄く若い裸婦の表情は、画面上部窓枠のカラスと共に不吉な印象を与えます。そのまなざしは謎のままですが、モデルはゴーガンの子を産み、亡くしたばかりの愛人パウラだといいます。
人間の「生と死」に対する答えを求め続けたゴーガンは、タヒチで何を見出したのでしょうか。プリミティブ(原始的)な力強い表現を追求したゴーガン。まさにその力強さを感じさせる傑作、そしてゴーガン自身もこの作品を「傑作だ」と自負したと言われています。

ポール・ゴーガン《ネヴァーモア》1897年 油彩、カンヴァス 60.5×116cm コートールド美術館 © Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

 

『代表作でわかる 印象派BOX』p.8-9

マネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ…。今秋の「コートールド美術館展」では、たくさんの印象派、ポスト印象派の画家たちの作品が展示されますが、『代表作でわかる 印象派BOX』の「印象派人物相関図」では、作家たちの関係も分かりやすく図解しています。この図によると、マネと「踊り子」の絵で有名なドガは「衝突関係」にあった?

『代表作でわかる 印象派BOX』p.6-7

そもそも印象派って何?という疑問から、画家の生涯、作品150点の解説まで、「小さな印象派事典」というべき『代表作でわかる 印象派BOX』。この本で予習をして、美術展へ出かけませんか。

コートールド美術館展 魅惑の印象派
会期:2019年9月10日(火)~12月15日(日)
会場:東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
開室時間:9:30-17:30 金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
ただし、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開室

お問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)

チケット読者プレゼントのお知らせ
5組10名様に「コートールド美術館展 魅惑の印象派」の鑑賞券をプレゼント

東京都美術館で開催中の「コートールド美術館展 魅惑の印象派」(2019年9月10日〜12月15日)の観賞券をプレゼントいたします。

応募締め切り:9月30日(月)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

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『代表作でわかる 印象派BOX』

著者 冨田 章 2000円(税別) 講談社

小さな印象派事典。画家の生涯と作品150点をやさしく解説。

マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、スーラ……
印象派とその周辺画家32人の作品150点をやさしく解説。 画家の生涯や、人物相関も紹介しているので、より深く印象派を理解することができます。毎年必ず開催され、多くの人たちの目を楽しませてくれる印象派展。 本書は、展覧会の予習・復習にもぴったりの一冊です。

冨田 章
美術史家。東京ステーションギャラリー館長。1958年、新潟県生まれ。慶應義塾大学卒業、成城大学大学院修了。財団法人そごう美術館、サントリーミュージアム[天保山]を経て、現職。専門はフランス、ベルギー、日本の近代美術史。著書に『偽装された自画像』(祥伝社、2014)、『ビアズリー怪奇幻想名品集』(東京美術、2014)、監修書に『魅惑のベルギー美術』(神戸新聞総合出版センター、2013)、訳書に『ゴッホの手紙 絵と魂の日記』(西村書店、2012)、『クリムト』(西村書店、2002)、『ゴーガン』(西村書店、1994)などがある。
 

『代表作でわかる 印象派BOX』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。
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構成/生活文化チーム

出典元:https://kurashinohon.jp/1121.html