シャンパーニュとテキーラがベースのカクテル、シャンパーニュブラジリアン

トトロの様に神出鬼没で、風向きが変わったら次の街へ行ってしまうメリー・ポピンズの様に儚げ、そして『イル・ポスティーノ』の詩人パブロ・ネルーダの様に豪快でエレガントな人。私の愛する人はミュージシャンで旅人、年の半分をツアーで海外で過ごす。

いつ出発するのか、いつ帰国するのか。今度はいつ会えるのかな。そんな野暮な質問はしなくなって久しい。お互いに人生の目的があってビジョンが明確だから、共に暮らして家族を作って、、、というパートナーシップを持つ相手では無い―と出会った当初から分かっていた。独り占め出来ない事に苦しんだこともあったけれど、愛が昇華して今は、彼が何処かで元気に生きていて、幸せであればその他はどうでもいいや、と思えるようになった私を友人は≪菩薩≫と呼ぶ。

「Hiroko! Mon petit Buta! ヒロコ!ぼくの可愛いコブタちゃん。キミを誘拐しに来たよ。さあ行こうか!」
今回も突然ブティックに現れた彼は、仕事中の私と同僚のセシルを驚かせた。ちょこっと事情を知っているセシルが気を効かせて、Hirokoお疲れ様、今日はもう良いから。楽しんできてね。お茶目にウィンクをして送り出してくれる。こういう所がフランス人は粋だと思う。

彼と一緒に居ると世界が途端に輝き出すから不思議だ。無条件にワクワクして子供の様に舞い上がってしまう。ねぇ、今日は何処に行くの?彼の自転車の後ろに乗って晴天のパリの街を縦断する。最高の気分だ。セーヌ川に架かるポンヌフを渡って左岸から右岸へ、辿り着いたのはマレにあるお馴染みのバー、Maria Locaマリア ロカ。

 
パリジャンがこよなく愛する小さなバー、マリア ロカ。パリで一番美味しいカクテルが頂ける。Maria Loca ; 31 boulevard Henri IV 75004 Paris

オーナーのミカとギヨームが開店前の準備をしていた。久しぶりに会っても、家族の様に迎えてくれる。「Hiroko! 今日は特別な日なんだ、マリア ロカの5周年目のバースデー。これからパーティになるから、時間があったら楽しんでいってよ。」

日が暮れた頃から人が集まり出し、懐かしい顔見知りを何人も見つけて話が尽きない。気が付いたら彼がDJブースで準備に入っていた。そうか、今日は彼が演奏をするんだ、と今更ながら気が付く。

深夜12時丁度にバースデーケーキが登場。自家製ラムがたっぷりのババオラム。美味しかったなぁ。オーナーの御三家、手前からミカ、ロラン、ギヨーム

偶然なのか計画的なのか、いつも何らかのサプライズで楽しませてくれる彼との、こんなひと時がたまらなく愛おしい。儚くもあるが、確かな、恒久的な愛が二人の間にある事をお互いが知っている。若い頃は、運命の人は人生に1人しか存在せず、その人と結婚して家族となって永遠に添い遂げるのだ、と信じてやまなかった私。パリに来て10年、いろいろな愛の形がある事、あってもいい事を知った。