日本全体の輸出に占める韓国の割合は7.1%、韓国全体の輸出に占める日本向けの割合は4.7%しかありません。相手国という点では、日本、韓国とも米国と中国が圧倒的で、お互いに相手の存在感は薄いというのが現実です。

 

したがって日本が、貿易制限をさらに強化しても、韓国への依存度が高い一部の企業には影響が及びますが、日本全体ではそれほどのマイナスにはならない可能性が高いと考えられます。一方、韓国側にとってもそれは同じで、日本が貿易制限をすれば、韓国が困窮するというような話ではありません。

さらに言えば、貿易管理の対象になっていない、旅行やファッションといった消費者ビジネスについては、むしろ両国関係は緊密化しています。

両国の関係を不安視する声が高まるなか、9月28日には東京・日比谷公園で「日韓交流おまつり2019 in Tokyo」が開催。多くの人でにぎわった。 写真:Natsuki Sakai/アフロ

韓国には、コスメやヘルスケアの分野で、日本を含むアジア各国にはない魅力があり、どうしても韓国でなければダメという女性は少なくないでしょう(24時間営業のショッピング施設で、ファッションやコスメの店を好きなだけハシゴできる国はおそらく韓国しかないでしょう)。こうした日本人観光客は、多少、両国の関係が悪化しても、やはり韓国への旅行を続けると考えられます。

韓国から日本に来ている旅行客も同じです。日本のカルチャーが好きで、積極的に日本に行きたいという人が来日していますから、今後、日本にやってくる韓国人の旅行者がゼロになってしまうという事態もちょっと考えられません。韓国国内の不買運動も、あらゆる業界に波及するということにはならないでしょう。

日本国内のネット通販サイトではおびただしい数の韓国製アパレル製品が売られており、もはや日韓の連携なくしてはビジネスが成立しない状況ですが、こうした分野はあまり政治の影響を受けません。

政治と直結する産業分野では、両国の関係が希薄になっており、政治とは無関係な消費市場の分野では両国の関係が緊密になっているという図式ですから、経済全体への影響を考えた場合、日韓対立による影響はそれほど大きくないでしょう。

もっとも日韓の対立は感情的なものですから、政治的にはどうなっていくのか予断を許しません。しかしながら、国交を断絶するというような非常事態にならない限り、韓国製品が買えなくなったり、韓国に旅行に行けなくなるといった事態は考えにくいというのが現時点での冷静な判断です。
 

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