一部の銀行が、預金残高に対して一定の金額を徴収する「口座維持手数料」の導入について検討していると報じられています。メガバンク各行はすでに、窓口手数料の引き上げを相次いで実施しているほか、紙の通帳に対して手数料を徴収する案も水面下で議論されています。これからの時代、わたしたちは銀行とどう付き合っていけばよいのでしょうか。

 

これまで日本の銀行は、預金の残高に対して手数料を徴収することはありませんでした。しかし、こうした銀行の商慣習は国際的に見るとかなり珍しいものです。諸外国の場合、たいていの銀行は預金残高が一定レベルを下回ると口座維持手数料を徴収します。つまり、小さな金額を多くの銀行に分散させてしまうと、預金者が損をしてしまうわけです。

紙の通帳という制度も、一部の国では存在しますが、国際的には珍しいものといってよいでしょう。通常はステートメントと呼ばれる取引報告書が毎月送られてくるだけで、通帳というものは存在していないケースがほとんどです。最近はPDFなど電子的な形でステートメントを出す銀行も増えています。

日本では長く通帳を使って預金を管理し、口座維持手数料は徴収しないという商習慣を続けてきたにもかかわらず、なぜ今になって、口座維持手数料や通帳手数料に関する議論が浮上しているのでしょうか。その理由はズバリ、銀行の経営環境が厳しくなっており、従来と同じサービスを維持できなくなってきたからです。

日本は人口減少と景気の低迷が続いており、この状況が今後、劇的に回復する見込みは薄いというのが現実です。これに加えて量的緩和策による空前の低金利が続いており、銀行は融資で利ざやを稼ぐことができません。このため、残高が少なくコストの割に収益の少ない顧客をできるだけ減らしたいと考えているわけです。

銀行にとっては「お客様は神様ではありません」というわけですが、当然のことながら預金者にとっては困った事態です。

一定金額以下の顧客から口座維持手数料を徴収するということは、銀行側はより金額の大きい顧客とだけ取引したいと考えていることになります。今後は、残高が多い顧客には手数料を優遇する措置を打ち出してくることでしょう。こうした銀行の戦略に対抗するためには、わたしたちも少数の銀行にお金を集中していく必要があります。

少ない残高で放置してある銀行口座がある場合には、メインバンクにお金を移し、メインバンクの残高をできるだけ多くしておいた方がよいでしょう。あまり使っていない口座は思い切って閉鎖するというのもひとつのやり方です。

窓口手数料を引き上げたり、通帳に手数料を課すという動きの背景となっているのは、ズバリ、キャッシュレス社会への移行です。

 
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