自分が嫌い、から自分が好きになれた

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小林 最初に先生にお会いしたとき、「私は自分が嫌いなんです」ということをお伝えしたと思います。でも、今は自分を嫌うということが分からなくなりました。
そんな感情はどこに行ってしまったんだろう?というぐらいの成長を遂げられて、今は自分が好きになれた。これはとても大きな変化だなと思っています。

岸見 自分を好きになる、つまり自分が幸せであるには、嫌われる勇気が必要ですからね。ただし、少し話が逸れますけど、これは決して「嫌われなさい」と言っているわけではないんです。この本のタイトルだけが一人歩きしている感があるのですが。嫌われる勇気を持つべきなのは、良い人です。もともと嫌われている人は、嫌われる勇気はこれ以上いらない(笑)。

誤解する人がいるのですが、他人に嫌われていない人に「少しぐらい嫌われてもいいですよ」ということを伝えたかったので、こういうタイトルを選んだのです。

例えば弱い立場の人、子どもだったり生徒だったり部下だったり。そういう人たちが親や上司、大人たちに対して、「それ違うのではないですか」と言える勇気を持ってほしいのです。でも多くの良い人は、相手に良く思われようとして、自分を抑えたり我慢したり、本心を隠したりする。だけど嫌われる勇気を持たなければならない、嫌われることを恐れるな、そういう意味のタイトルなのです。
職場でいうと上司、家庭で言うと親、年齢で言うと老人、こういう人たちが嫌われる勇気を持ったらろくなことがないですから。


数多くのネガティブコメント。「自分の問題」ではなく
「相手の問題」と分かっていたけど……


岸見 そうは言っても、世間からいろいろネガティブなことを言われると苦しまれますよね。そこはどう自分の中で対処されたのですか?

小林 アドラーの言う「課題の分離」ですかね。それは他者の課題であって、自分の課題ではないから切り離す、という。私のことをいろいろ悪く思う人は世の中にたくさんいるけれど、それは相手の課題だから、私がどうすることもできないんですよね。

岸見 言うのは簡単ですけど、実行するのは難しいですね。

小林 はい、頭では分かっているんですが、じゃあ分離できますかと言われたら、やはり傷つきますし、落ち込みますし、追い込まれていくことももちろんあるんですね。だけど結局どうしようもない、というところにたどり着くわけでして。

そのとき思い出すのが、本にも書かれていた三角柱の話なんです。被害を訴える私から見えているのは、「かわいそうな私」と「悪いあの人」の二面だけ。
でもその裏にはもう一面隠されていて、それは「これからどうするか」という面。私の場合、会ったこともない人たちが相手の時もあるので、「もうどうしようもない」と思うしかないんですよね。
そう頭では分かっていても、心と頭が一致するというのはとても難しいです。

岸見 評価と価値は違います。「アナタって嫌な人ね」と言われても、それはあくまでもそう言った人の下した評価なので、その評価の言葉によって自分の価値はビクともしないはずなのです。
でもやっぱり凹みますね。私も、アマゾンレビューで自分の本について「くだらない」と書かれているのを読んだら、1日凹みます。

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小林 先生にもそう言ってもらえるとホッとします。

岸見 その人がそう評価しただけで本の価値とは関係ない、と分かっていても凹むんです。それが人間です。
一方で、対人関係の中で「アナタってすごくいい人ね」と言われたら舞い上がってしまいます。それもその人の評価でしかないから、その言葉で自分の価値が高まるわけではないのですが。
そういう意味では、他の人がどう思おうと自分は自分なんだ、という自信がいるわけです。が、それは本当に簡単な話ではない。

小林 難しいです……。

岸見 「課題の分離」なんて、そんなにすぐにできることではありません。
そもそも、理解しようとしない人に理解してもらおうという努力は、不毛とまでは言いませんが、あまりしなくていいと思います。誤解する人は必ずいますから。

本当はそういう人には、屈折した承認欲求があるのですけどね。相手を悪く言う人は、本当はその相手に近づきたいのです。でも正攻法では近づけないから、相手が嫌がることを言って注目してもらおうとする。実際効きますからね。
私が、「くだらない」と書いてある数少ないレビューのほうが気になるように。

だからこそ、そんな人たちのせいで自分の人生をフイにしてはいけない。幸せになれるのに、そういう人たちのために自分を不幸にしてはいけないと思います。

小林 そうですよね、分かっていても気になってしまう。人間って不思議ですよね。

岸見 自分一人で落ち込んでしまうなら、仲間を募るといいのです。
アドラーは「仲間」という言葉を使うのですが、自分が何をしても好意的な人というのは絶対にいます。自分が思っているより、はるかに多い。
そういう人と近づき、そういう人がまわりにいると実感する努力をしていったほうが、建設的な、幸せな人生を生きられると思います。