対人関係を避けたいから自分を嫌う、その意味
小林 「課題の分離」を知っていて悩むのと、知らないで悩むのとでは全然違っていて。まずは、「課題の分離」を分かっていて、「そのうえで自分がこういう考え方をしている」と内省することから始まると思うんです。
知らないと道しるべがなくなってしまうので、延々と悩むことになってしまって、もっと辛くなってしまうと思うんですね。そういう意味でも、アドラーの教えってとても大きなものだなと、と。……もちろん、長年かかってはいます。
それでも徐々に、「自分のこと嫌いってどういうことだったんだっけ?」と思えるくらいになったことは、すごく私の中では大きいことで。しかも、まさか先生に夫を紹介できる日が来るなんて思いませんでした!
岸見 アドラーは、「自分に価値がある」と思えるときにだけ勇気を持てると言っています。自分のことを嫌いと思っている人は、自分に価値があると思っていないのです。
どういう意味かと言うと、自分が嫌いだから勇気が持てないのではなくて、勇気を持たないために自分を嫌いになる、つまり価値がないと思う、ということ。
小林 勇気と価値は密接に関係しているんですね。
岸見 この勇気というのは対人関係の中に入っていく勇気です。対人関係の中に入れば、傷つけられるかもしれない。怖いのです。そこで対人関係の中に入らないための理由がいる。それが、自分が嫌い、自分に価値がない、なのです。何か原因があって嫌いなわけではありません。
対人関係の中に入っていかないようにするために自分を嫌う、あるいは自信がないと思う。でも人間は不完全ですから、共同体も最初からあるわけではなくて誰かと一緒に作っていくんだと思えれば、不完全なまま飛び込むことができるものです。
幸せになる勇気を持つと決めたことを
夫が思い出させてくれる
小林 何か少し不幸、みたいなほうが安心するという心理というのは何なんでしょうか?
岸見 やはりそれは、屈折した承認欲求です。本当に幸せになってしまうと誰からも何も言われなくなりますから。
また、「あの人はまだ不幸に戻るかもしれない」と足を引っ張ろうとする人もいます。それに「自分も乗っかってみたいな」と思うときは、手放しで幸せにはなれません。
それこそ「課題の分離」で、人のことはどうでもいい、とにかく幸せになるんだ、と思えたら人生も随分変わってくるのですが、まだ世間に未練を残したまま、どこか不幸になりたい自分があるのかもしれないですね。
小林 全くないとまでは、正直言えないかもしれないです。どうしてもメディアという世間の中で生きているので、引っ張られてしまうようなときがあります。
ですが、夫がすごくしっかりしているというか芯があるので、引っ張られてもちゃんと戻してくれるんです。
「それは麻耶ちゃんの考えですか? それとも誰かの考えですか?」ということを優しく質問してくれて教えてくれるので。まるでアドラーのように(笑)。
そうやって自分にすぐに戻れるということは有難いことです。もし自分一人の人生を歩んでいたら、私はまたブレていたかもしれないと思うんですね。夫と私という一つの共同体を手に入れたことによって、「そうだ、私は幸せであることを選んだんだ、そして幸せを続けるための努力をしていきたいと思っているんだ」というところに戻ってこられる。
あくまで私の場合ですけど、私には幸せになる勇気を持つためには相手が必要だったんだな、と思います。
今回のコーディネート
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シャツ¥18000(ヴェルメイユ パー イエナ)、サロペット¥45000(クチュール ド アダム)、ネックレス¥25000(シュム)/ヴェルメイユ パー イエナ 日本橋店 靴¥54000/イエナ エディフィス ラ ブークル(エマ ホープ)
【お問い合わせ先】
イエナ エディフィス ラ ブークル tel. 03-3226-5100
ヴェルメイユ パー イエナ 日本橋店 tel. 03-6262-3239
撮影/目黒智子
スタイリング/室井由美子
ヘア&メイク/秋山瞳(PEACE MONKEY)
構成/幸山梨奈、片岡千晶(編集部)
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