今週、厚生労働省の人口動態統計の速報が発表され、日本の出生数が今年は90万人を割り込む見込みであることが大きく報道されています。2018年の出生率は1.42。団塊ジュニア世代の出産が一段落すると、更に下降することが懸念されています。

 

ところで、少子化に悩んでいるのは日本だけではありません。私が今住んでいるシンガポールや香港などのアジアの都市では、1.2前後という「Ultra-Low Fertility」が進行しています。

私はシンガポールに住み始めたとき、電車の中で子供に席を譲ってくれる人の多いこと、スクールバスなどの便利なサービスが浸透していることなどから、子育てのしやすさに感動した経験があります。どうしてこんなに子育てがしやすそうに見えるのに、出生率が低いのか?

専門領域ではないものの、あるシンガポールの大学教授にこの質問を投げてみたところ、帰ってきた返事は以下のようなものでした。

「女性がどんどん高学歴化しているでしょ。でも、シンガポール人の男性は家父長的考え方があるから、女性より偉ぶりたい。だから結婚が成り立たないんだよ」

ちょっと自嘲気味に笑って答えてくれたこの教授の回答は、実はかなり真髄をついていたことが後々論文などを読んでわかりました。  

日本も同じですが、シンガポールの低迷する出生率の主因は、結婚自体が減っていること(そして結婚するとしても晩婚になっていること)です。そしてその背景には女性の高学歴化があります。それがどうして未婚につながるかというと、1つは経済力を身に着けた女性たちは、経済的に誰かに依存する必要性を感じずに済むから。

これだけなら少子化には直結しませんが、日本やシンガポールは婚外子への風当たりが厳しいので、女性の経済的自立や未婚が少子化の一因につながります。

そして2つ目は、教授が触れていた「男性が女性より上であるべき」と考える家父長制とも言える規範です。 シンガポール国立大学の調査(NUS2013)では、女性が結婚相手に求めるものとして、自分より身長が高いこと(67%)、年上であること(55%)、高収入であること(44%)、知的であること(35%)、高学歴であること(23%)などが挙げられており、いずれも上昇婚の志向があることを示しています。

 
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