好対照なふたりを魅力的に描く『スカーレット』


SNSがざわついた「キスシーン」


朝ドラこと連続テレビ小説の新シリーズ『スカーレット』が理想的な朝をもたらしています。信楽焼で有名な滋賀県・信楽で陶芸家として生きる主人公(戸田恵梨香)を描く、朝ドラ第101作目。それは「朝ドラらしい」とおおむね高評価です。

 

「朝ドラらしい」とは、幼い頃「戦争」で大きな「喪失感」を体験した主人公が「自然」にあふれた「田舎」で「貧しさ」や「だめな父」という逆境にも負けず「家族」で助け合って生きていくなかで、「友達」や様々な人々と「触れ合い」、いつしか「夢」や「才能」を見つけていく姿にその日一日を過ごす元気がチャージされるというもの。そのベースが1週間でほぼ過不足なく描けていたと思います。まるで、ビュッフェ形式の朝ごはんにずらりと魅惑的な料理が並び、どれからお皿に載せようかわくわくしてしまう感じ。そこにSuperflyの主題歌「フレア」がかかって、のびやかな高音が前向きな気分にさせてくれるのです。

しかもオーソドックスなメニューだけでなく、新鮮味のあるメニューも用意されて、食にうるさい人の心もくすぐります。
土曜日に、主人公・喜美子(川島夕空)と同級生・照子(横溝菜帆)のキスシーンという新機軸が登場。朝ドラで“百合”と喝采する者、子供になんてことをさせるのかと眉をしかめる者、SNSをざわつかせました。しかもこのキスシーン、単なるにぎやかしではなく、照子が目撃した、戦争で亡くなった兄が別れ際、恋人としていた行為の追体験というなんとも胸を締め付けられるものなのです。そこに友情や大人になることの憧憬などたくさんの感情を込めた名場面でした。

主人公・喜美子(川島夕空)と同級生・照子(横溝菜帆)のキスシーン

単なる朝ドラのテンプレートではない新鮮味も加わったことで、今後、朝ドラらしいもの、朝ドラらしくないもの、どっちに転ぶか予断を許さない状況。そしていよいよ成長した喜美子(戸田恵梨香)、照子(大島優子)のターンへ……。

 
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