このところ日韓の対立が激しくなっており、韓国行きの飛行機が減便になったり、日本にやってくる韓国人観光客が減少するといった影響が出ているほか、韓国では一部の日本製品に対する不買運動も発生しているようです。こうしたことから、日韓対立によって両国の景気が落ち込むのではないかと心配する声が日増しに高まっています。

 

両国の対立は感情的なものなので、政治的にどう推移するのかは分かりません。しかしながら、経済的な面においては、一部の業界を除き、それほど深刻な事態にはならないと筆者は考えています。産業分野における日韓関係は年々希薄になる一方、政治的対立とは無関係な消費市場における両国の関係はむしろ緊密になっているというのがその理由です。

日本政府は今年の7月から、半導体の製造に不可欠とされる製品の対韓輸出について審査方式変更するとともに、韓国をホワイト国(輸出管理を厳格に実施している国)のリストから外すという措置も実施しました。この措置に韓国側が猛反発し、今度は、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するという事態になっています。

このまま日韓の対立が続いた場合、両国の経済がどうなるのかついては国内でも意見が分かれています。

韓国経済は日本に依存しているので、韓国経済が大きな打撃を受けると主張している人もいますが、逆に日本企業が有力な輸出先を失うことになるので日本経済にとっても影響が大きいという指摘もあるようです。しかしながら、筆者は世間が大騒ぎしているような事態にはならないと見ています。

かつての韓国は日本から基幹部品を輸入して、国内で製品を組み立てるというビジネスを行っていました。韓国にとっては日本がいないと製品が作れませんし、日本にとって韓国は重要な輸出先でした。こうした状態で貿易が停滞すれば、確かに両国経済にとって大きな打撃となるでしょう。

しかし現在の韓国は、以前と比べて多くの部品を自前で製造するようになり、東南アジアからの部品調達を増やすなど、日本への依存度を減らしています。これによって、日本にとっても韓国は主要な輸出先ではなくなってきました。日本と韓国は隣国ではありますが、以前と比較すると両国の産業はそれほど密接な関係ではなくなっているのです。

 
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