
「少し日本でゆっくり休んで」2000年の6月に、緒方貞子さんから優しく言って頂いた記憶があります。
その時、私はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)職員として、ウガンダ北部に勤務し、スーダン難民の保護と支援にあたっていました。今では世界難民の日とされている6月20日は、その年まで「アフリカ難民の日」であり、当時高等弁務官でいらした緒方さんを現地でお迎えして記念イベントを行いました。
2年間のルワンダ勤務に続いてのウガンダ遠隔地勤務で、まだ20代で気力・体力共に充実していたとは言え、私がよほど疲れて見えたのかも知れません。実際、安全上の制約があったり、仕事や生活のための電気は発電機に頼っていたり、食べ物の種類や娯楽は限られていたりしました。困難地に勤務する国連職員に与えられる健康休暇と有給休暇を合わせて、難民の日の数日後から日本で2週間過ごす予定であることを、緒方さんにお話しした際に掛けられたのが、冒頭の言葉でした。最前線で難民のために働く部下たちのことを、常に気にかけて下さっていました。
緒方さんの功績そのものについては、皆さん、既に色々なコメントを見聞きすることがあると思います。それに加えて、その格調高くも明晰で分かりやすい英語や、70代でなおスーツを素敵に着こなしていらっしゃった点にも注目してみて下さい。
国連や政府の高官というのは、接する中で割と気軽に時には雑談や冗談も交えてソフトにお話して下さる方も多いものです。その中にあって、緒方さんはむしろ、仕事や会食の場などで、(オフレコでも)ひたすら人道支援の課題や、なすべきことについて熱く語っていらしたのを覚えています。
後に残された日本人としては、緒方さんの世界的リーダーとしての個人の能力を称賛して終わるのでなく、やはり「日本は『人道大国』としての地位を占めてほしい」という彼女の願いを体現していくことが、一番喜んで頂けるのだろうと思います。
Comment