我が家の場合、息子は小さいころから、働く車、恐竜、昆虫の難しい名前を片っ端から覚えていました。国旗カルタを機に世界各国の国旗をかなり網羅しはじめて「この子はすごい!」と思ったのもつかの間、いつしか興味はレンジャー、仮面ライダー、ウルトラマン、そしてその後ポケモンにうつり、今はサッカーのヨーロッパリーグの選手の名前にご執心です。

心理学者の内田伸子さんは、生後10か月の子ども100人への実験から、人間関係に敏感なタイプを「物語型」、ものの因果的な成り立ちに興味をもつタイプを 「図鑑型」と名付けています(参考記事)。
我が家の息子は完全に図鑑型。内田さんの実験では物語型の80%は女子で、図鑑型の80%は男子だったそうですが、もちろん女の子にも図鑑型タイプの子はいます。

 

では息子の興味は図鑑以外には広がっていかないのかというとそんなこともありません。昆虫にはまっている時期に昆虫がどういう生態をしているのかについての絵本を出したり、国旗カルタにはまっているときに地球儀や地図帳で国の場所を確認してみたり、どんな人たちが住んでいるのかということを別の本で見せてみたりすると、とても興味を持ちます。こうした本を通じて、自然のしくみを理解したり、語彙が増えたり、自分の知らない世界への想像力を働かせたりしていくのではないかと思います。

 

一方、娘は完全に「物語型」。兄が以前はまった図鑑には全く興味を示さず、ほぼお蔵入り。お気に入りの同じ絵本を何度も何度も「読んで」と言い、映画も同じものを見ては、セリフをそらんじて言います。お話に入っていくことで、言い回しや表現を覚えるので、たまにびっくりするような文章をすらりと言います。

こうした個性の違いを踏まえずに、名作だからと、興味を示さないものを読ませようとしても、親子ともに苦痛だと思います。その時期、その子に応じて、適切な本にアクセスできるかどうかが、本を好きにさせるかどうかにつながるのではないかと感じます。子どもがいまいち本が好きじゃないみたい、という人は、物語型なのか図鑑型なのかを観察してみて対応を変えてみたり、興味のあるものに関連した絵本を探しに図書館に行ってみたりしてはどうでしょうか。


参考文献:

新井紀子『AIに負けない子どもたちを育てる』2019年
荒牧草平『教育格差のかくれた背景: 親のパーソナルネットワークと学歴志向』2019年
石井洋二郎『差異と欲望―ブルデュー『ディスタンクシオン』を読む』1993年
片岡栄美『趣味の社会学 文化・階層・ジェンダー』2019年
松岡亮二『教育格差』2019年
内田伸子『Benesse発2010年 子どもの教育を考える』掲載 「特集 子どもを取り巻く環境と生活習慣 [6]子どもの言葉の力を育てる環境づくり」

前回記事「夫婦で家事水準に差がでる3つの理由」はこちら>>

 
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